2006年02月12日

SEED-D SS「シーシェルピンク」

去年のシン誕生日記念に出そうと思ってたネタを今ごろになって書きました…
よかったら読んでください。

16禁です。
無断転載複写等は厳禁です。




 ザフト軍ジブラルタル基地。
 兵士宿舎。PM11:45。
 雨が非常階段のタラップに強く打ち付けている。跳ね返った滴で、ザフト・トップガンの証である紅の制服の裾が濡れて色を濃く変えていた。
 階段を三段降りた所で振り返ったアスラン・ザラが、タラップに立ったシン・アスカの右腕を引こうとして拒まれていた。
「なんだよ、どういうことだよ、隊長!」
 突然、説明もなしに部屋から連れ出されたシンは、困惑に苛々を加えた険悪な表情でアスランを見下ろした。
「俺はザフトを抜けるぞ。これから脱走を試みる」
 アスランは絵に描いたような優男の面に前髪を張り付かせて言い切った。上がる、シンのすっとんきょうな声。
「はぁ? また裏切んの? 飽きないね」
「そうじゃない!」
「なんで、また。何が気に入らないんだよ?」
「レジェンドだ」
 と、アスランは言い訳に、先ほど議長から受領したばかりの新機体の名称を持ち出した。
「見たか、あのカラーリングを。あれは俺のイメージにそぐわないと思わないか。俺はあんな悪の帝王が乗るような機体を任されたくはないんだ」
「だから脱走すんの?」
「そうだ、お前も一緒に来てくれ、シン!」
「イヤだよ。アホらしい!」
 取りつく島もなく一蹴したシンは腕を振りほどこうとしたが、アスランの腕力がそれを許さなかった。優柔不断の性格の割にここぞという時の力と無理強いは凄まじいらしい。
「シン!」
 アスランの顔が悲痛を訴える。なぜ、この熱い思いが伝わらないのか、と。
「だいたい、なんでオレがあんたと脱走しなきゃいけねんだよ。オレはあのデスティニーって機体、気にいってんだ。早く乗りこなせるようになりたいんだよ。あんたの茶番につき合ってなんかいられないんだッ」
 雨を避けるものが何もない非常階段で、二人は濡れ放題の濡れ鼠だった。髪から滴が滴り落ちて、頬を水滴が滑る。軍服は濡れそぼって重くなっていた。
「昨夜だって俺とお前は熱く絡み合ったじゃないか。俺に組み敷かれたお前は、かわいい声で泣きながら善がっていたじゃないか!!」
 アスランがシンに身の覚えも何もない、大変なことを口走った。その頬をさっと赤みが走る。
「ちょ、ちょっと待ってよ。オレたちそういう関係じゃないだろうが! 言うに事欠いてなんて作り話をしやがる……って、オレってば、また掘られる方なの? たまには逆の役割に回らせてくれよっ!」
「それは無理な話だな」
 シンの背後から第三者の声がした。
「レイ!」
 シンの歓喜した声と、アスランの忌々しい声がユニゾンした。レイは銃を右手に構え、アスランが油断した隙を突いてシンを背に匿うようにして移動させた。
 そして、アスランに向けて銃の引き金を引いたのだった。
 パン!
 乾いた音がした。銃に弾は装填されていなかった。鳴ったのは空砲だった。階段で身を硬直させるアスランに対して、タラップで勝ち誇ったような顔をしたレイはすかさず言った。
「次は実弾を撃ちます」
 空のカートリッジを引き出し、実弾を込める。
「逃げるのならお一人でどうぞ、隊長。シンが阿呆すぎてやがて可愛いのは分かりますが、あなたの身にシンは余ります。大人しく身を引いてください」
「アホってなんだよ!」
 レイはシンの背後からの抗議は無視して、再びアスランに銃を構えた。
「レイ、レイ! どうしてここが…」
 シンを肩越しに振り返ったレイは、いつもの優しい微笑を浮かべて言った。
「おまえが助けを求めたら、たとえ夢の中でも俺は助けに行く」

 …というような夢を昨夜見たという話をルナマリアにしたところ、彼女は文字通り腹を抱えて笑った。悪夢ではなく笑い話的な内容だったので、より大袈裟に笑っていた。
「あははは! まだジブラルタルのジの字も見えてこない辺りを航海中だってのに!」
「だからー。オレだってすぐに夢だってわかったよ」
「アスランさんとレイがあんたをとり合う図ねぇ! 恐ろしくって涙が止まらないわよ」
 こっちだってそんな三角関係に陥るのは御免だ、とシンはハンガーの隅っこの壁に背をもたれさせると、不服そうに唇を歪めた。
 二人は集団から離れて、それぞれ専用機の整備・調整作業を合間を見てサボっている最中だった。
「それにしても、夢の中とはいえ、あんたって掘られ役から脱却したいなんて思ってたんだ?」
 ぷぷ、とルナマリアは茶化しながらシンの頬を指でつついた。
「そうだよ。言ってなかったっけ。オレの将来の夢はレイを逆に襲うことだ。陵辱だ」
「あははは!」
 ルナマリアは壁を両手でガンガン叩いて笑った。
 そんなこと、土台無理な話である。
「笑うなよ」
「まぁ、夢は夢で、でっかく持ってれば? 世界征服とか言ってるよりマシよ」
「ちくしょう…ブタマリア」
 シンの小声に、ルナマリアは敏感に反応した。
「次言ったらブッ殺すわよ!」
 ルナが掴みかかる勢いで凄んだのに、おどけたフリをしてかわした瞬間だった。シンは壁に右手の指先をしたたか打ち付けてしまった。
 すぐに、じんじんと痛みが指から脳にはい上がってくる。
「いってぇ…あ、爪割れちゃった……」
 シンは泣きべそをかいたような情けない顔で、ルナマリアに破損個所を見せた。
「あーもう、また、こんなに伸ばして。割れやすくなるから、いい加減、爪くらい自分で切りなさいってのに」
 ルナは伸び切ったシンの手入れされていない手をしげしげと見つめた。それから、後で処置してあげるからと落ち合う場所を指定すると、所定位置へ戻って行った。

 しょうがないわねぇ、と言いながらもルナマリアがこうしてシンの爪の手入れをしてくれるのはアカデミーの頃からのことだった。
 シンは自分で爪を切ったことがなかった。いつもいつも母が定期的に切ってくれていたからだ。それで、爪を切ってくれる人がいなくなって、伸び放題にさせているのを、ルナが見かね、代わりに切ってくれたのだ。それ以来ずっとシンはルナに爪を切ってもらっている。
 生まれてこの方一度たりとも爪を自分で切ったことがないなんて、長男のシンは母にとても大切にされていた、というより、甘やかされ、構われすぎていたのだ。
「長男サイテー! 息子溺愛の母親反対! あたし、絶対長男と結婚しないわ!」
 ルナが半ギレでいってしまうほど、シンの長男っぷりはあらゆる面で見られた。きっとミカンの皮も自分で剥けないんである。
 ぐちぐちと文句を垂れながらも、ルナはまんざらでもなさそうにシンの世話を焼く。シンに当てにされ、頼られるのはそんなに悪い気はしない。それも、度を超さなければの話であるが。
 休憩時間のサロンで、シンはルナに爪の手入れをしてもらった。単純に切るだけではなく表面の甘皮をヤスリで削って磨き上げ、トップコートまで塗ってもらい、シンの爪はピッカピカに生まれ変わった。
「おーすげー、ピカピカだ、オレの爪!」
「ふっふっふ。それで少しは割れるのを防げるはずよ。ルナお姉さまに感謝なさい!」
「おー本当だねぇ。シンちゃんの爪、ピンク色で血色がよくって、かわいいなぁ」
 シンの隣りでヨウランが手入れの完了したシンの爪を見やり、ため息混じりに言ったのだった。
「まーた、殿はキモいことゆーなよ。変態疑惑が深まるゾ」
 デジタルブックから顔を上げたヴィーノが冷めた目と声でヨウランに忠告した。
「でも爪のきれいな男の子って、ちょっとドキっとするかも。片手の一本だけとか色が塗ってあるとワイルドでおしゃれでカッコいいよね」
 ルナマリアが切らしていたトップコートを姉権限で持って来さされたメイリンが言った。 そういうのは、アイドル系のタレントがよくやっていることだ。左手の薬指だけに黒いマニキュアがしてあったりするのだ。
「軍人が爪に色を塗るのはさすがに間抜けだろ、こけし」
 ヴィーノがメイリンに向かって言った。
「こけしって何よ! しつこい、あんた」
「だって、オーブの土産物屋で見た民族工芸品の中にあったヤツに似てるんだもん、こけし」
「似てないわよ!」
「似てるったら。似てるお前が悪いんだ、こけし」
 ヴィーノは誰にでも迷惑なあだ名を命名するが、特にこと、メイリンに名付けるあだ名はひどかった。あくまで悪気のないところが却って始末が悪かった。と、下らない押し問答の方は放っておいて。
「ねールナ、ついでに足の爪も切ってくれよぉ。指があんくらい伸びてたってことは、足だってそうなんだよー」
 シンは、出せる限りの猫なで声で懇願した。だが、ルナマリアは一笑に付した。
「そこまでしてやる義理はないの。足は自分で切るか、レイに切ってもらいなさい」
 毎度お馴染の返答だった。
 それで、自分では切れない、切る気もないシンは結局、部屋に帰ってレイに頼むことになるのだった。
「足の爪…? ああ、そういえば前回から半月くら経ったか…」
 風呂上がりのレイは、洗髪料の良い匂いをさせながら言い、爪を切ってやることを快く承諾した。
 シンは両足をレイの膝に投げ出して、両手を後ろについた格好をしていた。小気味よい音が下からして、爪を切る瞬間の圧迫感に似た衝撃を耐え忍ぶ。手はルナに足はレイにそれぞれ切ってもらう、シンはずっとそうやり過ごしてきた。
「なんで爪って伸びるのかな? 髪もだけど、すぐに伸びて切らなきゃいけなくなるから、面倒ったらないのに」
「それは、髪や爪が伸びるのは、生きている証拠だ」
「あ、そっか」
 レイがヤスリで切断面を擦っている間、シンは天井をぼんやりと見つめながら、取りとめのない話をレイに振っていた。
 こういうなんでもない、平穏な時間がたまにあってもいい、と思う。
「ほら、見てよ。ルナが手入れしてくれたんだ。トップなんとかを塗ったお陰で表面がピカピカ!」
 身を起こしたシンは、両手の爪をレイの眼前で見せびらかした。
「トップコートだろう。ああ、見事だな」
「ヨウランがオレの指を見てしきりにかわいい、かわいいってゆーんだ。そうかな?」
「…あいつ、おまえに気があるのか」
「そんなバカな。レイがそうだからって、他の誰もがオレをそーゆう対象に見るわけじゃないんだぞ」
「…ふん」
 レイが面白くなさそうに、最後の爪の断面を磨きおえると、右足の中指と薬指の間を開いてシンに見せた。
「ほら、おまえ知らなかったろう。こんな所にホクロがある」
「え、マジで? 知らなかった…いつ出来たんだろう……」
「さあ。俺も今気付いた。最近出来たものかも知れないな」
 中指の、外側に捻ってやらなければ見えないような位置に、小さなホクロはあった。ふいにレイが口を寄せ、突き出した舌先で、ホクロを突っついた。
「うわっ!」
 くすぐったくもあり、気持ちよくもある微妙な感覚に、シンは声を上げた。舌はホクロを舐め、やがて足の指を舐め始めた。ついには足の指を口に含まれて、シンは慌てた。
「れ、レイったら、やめろよ! オレ、まだ風呂に入ってないんだし、足の指を舐めるなんて汚いだろ!」
 生温い感触が、熱い口の中で移動している。レイはシンの両足の爪を指ごと口に含んで、一本一本を丹念に舐めた。その奇妙な愛撫はこそばゆくて、力を入れていないとどうにかなってしまいそうだ。
「シンの足の爪もかわいいと、ヨウランは知らないだろう。知っているのは俺だけ。小さな桜貝のように慎ましやかで、愛らしい爪だ」
 レイはシンに見せつけるように、薬指の爪を舐め上げた。シンの顔が羞恥に赤く染め上がった。
 シンの爪は手も足も少年のものにしては面積が小さく、形もこじんまりとして色も程よい。桜貝を思わせた。
「そ、そんなこといつも思ってたのか?」
「ああ、そうだ」
 レイはそう言って身を乗り出すと、シンの顔に顔を間近に寄せた。触れるだけの口づけを二度して熱っぽい声色で囁く。
「シン、しよう…」
 レイの柔らかな唇の感触がリアルに残るうちにそんなことを請われ、シンは焦りに焦った。
「え、だ、だって心の準備が…」
 シンを見つめながら、レイがどんどん体を密着させ、体重をかけてくる。
「み…耳の後ろ、昨日もその前も洗ってないし…」
「そんなもの…足の指をねぶった後だ、大差ない」
 レイが含み笑いをして、シンの下腹部に手を伸ばし、そっと形を象るようにそこを撫でた。
「あ、嫌…」
「嫌だ? どの辺りが」
 シンの中心にはすっかり熱が体中から集まっていて、レイに指を舐められている段階でとっくに兆し始めていた。シンの反応が早いのを知りながら、レイはわざとそういう風な意地悪を言う。
「い、いきなりそこからかって意味!」
「一度出せ。苦しそうだ」
 シンは風呂に入ろうとする前だったので、上こそ上着を肩にかけていたが、下は制服のパンツを脱いだ下着一枚の格好だった。下着を押し上げて欲望が自己主張をし、レイの援護をする。
「手か口か、どっちがいい?」
 シンはもうどうしようもない所まできてしまっているのを自覚していたが、このまま風呂へ直行して自分で始末する、という選択をレイは許しそうになかった。
 答えにくそうに、そっぽを向いたシンは答えた。
「手……」
「口ではなくて?」
 レイは意外そうだ。
「だって、おまえ、飲む気だろ…」
「嫌なのか」
「恥ずかしい」
「あまえも俺のを飲みたがるくせに」
 レイはおかしそうに下着を剥ぎ取ると、手である程度の刺激を与えてから、シンの肉茎を口で愛撫し、射精を促した。
「あ、あうん、あーーーーッ!」
 シンはあっけなく達し、熱い白濁をレイの口内へ吹き出した。

 シンが自分で爪を切らないのは、一人になったことを自覚したくないからだ。
 すべてを喪失したシンは、必然的にしてもらっていたことの多くを自分でしなければならなくなった。掃除、洗濯、着るものの準備、寝癖を直すこと…
 爪を切るくらい、やって出来ないことはないだろう。だが、家族を失ったと自覚し、受け止め、寂しさを克服することで家族の温もりから遠ざかるのが嫌だったのだ。痛みを伴いながらも、家族の記憶に執着せずに生きてはいけないのだ。
 胸を掻きむしられるような痛みを散らすのに、もっとも有効な手段がレイと交わることだった。レイの情に寄生するように依存している。レイがそれを許したからだ。
 好きだと口に出して認めたことはない。ましてや、愛しているなどと、口が裂けたっていえはしない。その言葉は口にすると嘘臭い。口から出た途端に死ぬ。砕け散る。消え失る。そんな壊れやすい気持ちだと思った。
 失った家族の温かな記憶を埋めるためにレイを利用しているシンに、レイは体を与えられる以外にどんな価値を見いだしたのかはわからない。
 ただ、好きだと大事だというから。
 愛おしいと言ってくれるから、それにすがっている。

 レイの長い指がシンの白い肌を滑って行く。唇は胸に食いついては離れ、吸いつき、やがてうっ血のあと、赤い花の痕跡を残した。
 シンは両手をレイの背に回し、肩甲骨の窪みを撫でたり、快楽の波が押し寄せると、爪で引っ掻いたりした。たまに目をうすらと開けても、視界は煙って見えて確かではない。喘ぎ、善がって、ここはもううつつの世界ではないと正体を無くした頭で思った。
「レイ…すっごい気持ちいい…いいよぉ」
「…そうか」
 レイの水気を含んだような色っぽい声が遠くから聞こえた。
 こいつは俺のことが好きだから、こんな気持ちよくしてくれるんだ。
 俺はこいつのことが好きだから、これが気持ち良いんだ。
 脳が痺れ、快楽が愛であるかのように錯覚する。頭の中で花の蕾が開花するよう。
「頭ん中で花がいっぱい咲くみたい」
「俺の中でも、咲いてる……」
 シンの秘所に進入を果たし、奥に辿りついたレイは、背をしならせながら答えた。支配欲を満たし、苦痛混じりの快楽を享受する表情の美しさは壮絶でさえある。
「シン…良い…」
「レイ……」
 ここで言うことは、ぜんぶ幻で、ぜんぶ嘘だから、何を言ってもいいんだ。
 好きなだけ思いをぶちまけても、朝が来たら消えるから。
 何をいっても、いいんだ。

 
 THE END.

060204

新しい話を考えつけばいいんですけどねぇ…
ネタが浮かばないのが目下の悩みだったりします…はぁ……


posted by 百武 晶 at 20:01| Comment(0) | TrackBack(0) | SEED-D AnoterSide SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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