2005年09月01日

SEED-D SS「スプラッターパンク!」(前)

本日9月1日は、シンの誕生日でした。
おめでとう、シン。
私はアニメキャラの誕生日を気にしたのは、ぶっちゃけ小学生以来の話です。よくノリが掴めません。祝い方もわからんので、とりあえず記念に愛を込めてSSを書いてみました。
趣旨としては、「せめて婦女子の妄想の世界でくらい、しあわせになれ、シン!!(三石ボイス)」。
私はミネルバでの生活はそれなりに楽しいものだと思っているので。

〜戦艦ミネルバのとある日常の一コマ〜
 レストエリアを通りかかったレイは、シンに呼び止められ、とある誘いを受ける。
 レイの身に降りかかる不幸とは…
 シンの目撃する恐怖とは…

 レイ視点。三人称。

・レイシン。
・やおい。
・原作アニメには対応していません。
・シンが楽しく日々の生活を送れるように、環境(キャラ設定含む)を改造してあります。
・年齢制限は設けませんが、読むのは15歳以上が望ましいと思う。
・無断転載はしないでください。

 後編は5日(月)に更新予定です。


   「スプラッターパンク!」


「レイ、レイー!」
 レストエリアを通りかかったレイは、覚えのある声に呼び止められ、おもむろに振り返った。
「レイ、ちょとこっち!」
 シンだ。
 立ち上がり、大きく右手を振っている。その顔には常日ごろの怒気は無く、ゆるんで実年齢より幼く見えた。
「…………」
 レイは無言のまま、形の整った細い眉をひそめた。
 シンの両脇を陣取る、ルナマリア、ヨウラン、ヴィーノといういつもの面子の姿を見て取ったからだ。
 本音を曝せば、あまり混ざりたくはないグループである。危なっかしく、捨て鉢になりがちなシンの脇をがっちりと固め、サポートしてやることが天命か何かだと思っているらしく、シンに何かあったら承知しない、という空気をレイに向かって放つのだ。
 特にその気配が濃厚なヨウラン。
 話の通じないヴィーノ。
 逆らえないルナマリア。
 育った環境と触れてきた世界がまるで違うせいか、レイにとって彼らは異次元の人間も同じだった。つまりは、そのノリに着いて行けないのだ。
 いつまで経っても消せない苦手意識。ああ、またいじられるのか…
 出来る事なら、このままここを通り過ぎてしまいたかったが、シンに来いと請われて行かない訳にもいかない。
 焦れかかったシンの右手は、手招きに変わっている。背後から、ルナマリアの援護射撃が上がった。
「レーイ、あんたのシンが呼んでるわよ。とっとと来なさいよ」
 心中で嘆息したことなどおくびにも出さずに、レイは端麗ながらも能面のような顔でレストエリアへ足を向けた。
「部屋の外では話さないんじゃなかったのか」
「うん。でも、他のヤツらいねーもん。オレたちだけ」
 二人の込み入った関係を悟られない為に、基本的に艦内では話さない、関わらないように努めようと提案したのはシンだ。
 レイはそんなことは気にしなかったが、シンがそうすると言い張るのだから仕様がない。シンの気が済むように、望むように振る舞っているのだ、レイは。
「どーかしたの、レイ」
 レストエリアに足を踏み入れたレイは、シンに腕を引っ張られてソファーに腰を下ろすより先に、右と左を忙しく警戒した。
「見た所おまえの妹の姿はないようだ。あの観葉植物の裏に潜んでいたりはしないだろうな」
「メイ? メイならここにはいないわよ。あの子は新しい隊長を囲むのに夢中だもの」
 レイの整った顔に見下ろされる状況にも慣れたもので、ルナマリアは肩を竦めてあっけらかんと答えた。
 それを聞いたレイは胸を撫で下ろした。
 メイリンはレイを盗撮するのが趣味だという。その熱はミネルバに来てから加熱したように見える。何度、やめて欲しいと注意をしても一向にやめる様子がない。そろそろ本格的に手を打たねばと思っている所だ。
 乗組員が常時閲覧可能なウェブ上のリストには、趣味・特技の項目があるが、そこに堂々と「レイの盗撮」と入力してある。あのかわいらしい顔は、実は鉄面皮なんである。
「メイリンの盗み撮りなんか気にしなきゃいいんだよ」
 シンは、メイリンのイメージが妹と重なるとかで、彼女に関しては大層寛容だ。その寛容さを他のものに向ける気はないらしい。
「そぉだよ、レイレイ。いーかげん、諦めりゃーいーのに」
 ヴィーノが、鼻にかかった独特の間延びした声でシンに同調した。
 レイの神経がぴくりと反応し、鋭い眼光がヴィーノに走る。科白を言い終わるか終わらないかという間際だ、だらしなくぶらつかせていた両足の間を、レイの蹴りが食い込んだ。
 ソファーが、誰も聞いたことのないような、くぐもった重い音を立てる。
「レイ」
 人の名前を二度繰り返すな、とレイはヴィーノに凄んだ。
「貴様に、プライバシーをネットに流される人間の不愉快が理解出来るのか」
 双手を挙げ降参の態度を示したヴィーノは、縮み上がって隣のヨウランに泣きついた。
「こ、こここ、きょわいよ、あのヒト!」
「…今のはおめーが悪いんじゃね?」
 ヨウランは左肩に縋り付いたヴィーノの頭を二三度ぽんぽんやった後、パック型の乳酸菌飲料に口を付けた。
「レイは、シンにも同じこと言えればいいんだわ」
 傍観者を決め込むルナマリアは、棒状のビスケット地にチョコがかかった菓子をぽきりとやった。この際、妹の犯罪すれすれの行為については彼女の知る所ではないらしい。
「それで…」
 レイは乱れた金髪を整えると、シンを向き直った。
「何か」
 シンは、そぐわない名で呼ばれるのを良しとしないレイが、それでも懲りずに呼び続けるヴィーノを足蹴にする場面を間近で見たことがなかったので、呆気にとられたように口をぽかんと開けていた。
「え? あ…ああ。えっとね……」
 我に返ったシンが、レイに背を向け、ソファーに置いていた何かを取り上げる。
「えへへへへーーー」
 再び振り返ったシンは、満面の笑みを浮かべていた。
 レイの思考を一瞬にして嫌な予感が覆い尽くす。
 この屈託の無さは、何か良からぬことを仕掛けようとしている時の笑顔だ。シンに屈託が見えない場合は、十中八九、裏があるのだ。
「レイ、これ、一緒に観ようぜー!」
 シンの手にあるのは透明ケースに入った記録メディア。レイは映像が入っているだろそのディスクを凝視した。
「………なんだ、それは」
「んふふ。『SILENT HILL3』だ!」
「なんだ、それは」
 レイは、同じことを二度言った。
 だがしかし、その脳裏には、血しぶきを浴びたピンク色のウサギがフラッシュバックしていた。
「覚えてないの? オレ、1も2も観せたじゃん」
「……記憶にない」
 レイは顔を背けた。背けた目線の先で、計ったようにヨウランが口を開いた。
「いやー、今度もロビー君はすごかったね。ぶち撒けまくりだったね!」
 ウンウン、と隣でヴィーノがうなずいた。
「ホラ。思い出した? ロビー君」
「………」
「レイも今日のスケジュールは消化したろ? これから一緒に観よう」
「そんなものは、俺ではなく、こいつらと観ればいい」
 柄にもなく、往生際が悪いレイは無駄と知りながらも、足掻いた。
「オレたち、とっくに観ちゃった後だよぉ。こないだ寄った基地で、オレが発掘してきたソフトだし。シンにウケると思ってぇー。オレの調べによると、このシリーズは4まで制作されたらしいケド、最高傑作は間違いなく今回の3だね! ちょーキモ怖ェもん」
 と、しなくていい評価を下したヴィーノがケタケタとカンに障る声で笑った。
 ヴィーノは地球に降りて来てからというもの、寄港する都市で古い映像ソフトを買い漁って来る。保存形式も記録媒体さえも違う過去の遺物を、最新の機器で再生できるにようにデータ変換し、焼き増ししたものを艦内にバラ撒いている。
 最も平和な時代、人々が繁栄を極めた時代、二十世紀末から二十一世紀初頭に作られたものが多く現存しているようだ。
 映像作品群の中でも、当時、最盛期だったというホラー映画に彼らは痛くご執心だ。レイはそれにも着いて行けない。ホラー映画などより、野生動物の記録映画でも観ていた方がずっとマシだ。
「……たまには、ルナマリアと観ればいい」
 レイは投げやりに、ルナマリアを見やった。
「ごっめーん! あたし、メイとか女子部ともう観ちゃった。うふ」
 両手を頬に添え可愛い子ぶったルナマリアは最後に舌をちろりと出した。
「………」
「オレんとこには、ほぼ最後に回ってきたってことだよ。オレ、超楽しみなんだけど…レイは嫌みたいだな? オレと一緒に観たくないんだ」
 絶句するレイに、シンが随分と素っ気ない態度で言った。
「そんなことは言ってない、断じて…」
「いいよ、べつに無理しなくて。レイがダメなら、そうだなぁ…隊長の部屋に襲撃かけて、強制的に見せようか? あいつも免疫なさそうだから、きっとロビー君にビビって泣くぜ」
 新たに思いついた企みに悪魔の笑みを口に浮かべ、シンはヴィーノと顔を見合わせた。
「それはしなくていい。自分から敵の懐に飛び込むような真似はするな、シン」
 レイはシンに詰め寄った。
「敵? あいつはムカつくヤツだけど、敵じゃないぞ」
 クソ真面目なレイと、きょとんとしたシンの表情の対比に、ルナマリアが吹き出しそうになりながら、口を抑えてそれを堪えていた。
 ミネルバ広しといえど、アスランがシンに気があるのではないかと疑う人間なんて、レイしかいないのである。
「あーもー。ホラー映画ぐらい一緒に観てやりゃーいいじゃん。二時間がっつり同じ時と場所を共有出来ると思えば。レイくんには持って来いの状況じゃないですかねぇ」
 ヨウランが、シンに助け船を出したが、どこか言葉にトゲがあった。その刺々しさはレイに対するもので、時に敵意であったり挑発であったり挑戦であったりする。
 やっぱりこいつ、どこがどうと言うより、無性にムカつくのだ。
 レイはヨウランを睨んだが、ヨウランは平然と明後日の方向を向いた。
「……わかった、観る」
 レイは、結局いつもと同じパターンで折れることになった。言い換えると「罠にはまった」とも言う。
「わー、ホント? やったね」
 シンが現金に、へらへらと笑った。
「そうとなれば、部屋に戻るぞ、シン」
 レイはシンの腕を掴み、レストエリアから引っ張り出した。長居は無用だ、こんな所。
「ありがとー、ヨウラン」
 シンが手を振りながら、残された三人に、こそっと言い残して去って行った。
「レイレイさぁー、ロビー君見てショック死すんじゃない?」
「まっさかぁ。でも、ホラーなんだし、そこは心臓麻痺でしょ」
 ヴィーノの軽口にルナマリアが乗り、ヨウランが残った乳酸菌飲料をずるずるとストローで吸い上げた。

『深い霧の彼方からやって来るもの…
 血と悲鳴とノイズを引き連れて来るもの…
 ロビー君は三たび蘇る…!』
 ヴィーノが持っているパッケージの裏面には、そんな何の捻りもないコピーが印刷されていた。
「でも、驚いたな。あんな風にキレるんだ、ヴィーノに。普段は抑えてるだけで、レイってホントはキレ易いの?」
 通路にて、シンにあらぬ疑いをかけられたレイはきっぱりと訂正した。
「シン…それは違う。あれは俺の主義に基づいた行動だ。感情に任せてやってしまった訳ではない。俺は自分を見失ったりしない」
「ふーん。まぁ、それもそっか」
 部屋に入るなり、シンは映画を視聴する環境を整える為にいそいそと動き回った。ベッドの位置に合わせて壁掛けの超薄型ディスプレイを移動させ、音の跳ね返りを計算しながらスピーカーの角度を調整したりと、レイが言及するまで片すことも中々しない怠惰な生活態度が嘘のようだ。
 逆に、レイは亀の如き鈍足でシンのベッドに辿り着き、腰を下ろした。馴染みのある筈が、座りがひどく悪い。
 ふと、映像ディスクの入ったケースが指に触れた。
 レイは言葉もなく、それを目を皿のようにして見つめた。
「何してんの?」
 背後からシンの訝った声が掛かって、レイは肩をびくつかせた。
「まさかとは思うけど、ディスクをこの世から消してしまえば、なんてセコイこと考えてないよね、レイ」
「……考えてない、ない」
 レイは大げさにかぶりを振った。美しい金髪が空しく宙を舞うようにして揺れた。
 危うく、シンみたいなことをしてしまう所だった。
「ならいいけど。それ、取って」
 シンは、おずおずと差し出されたケースを乱雑に受け取り、再生機器にセットする。それから、スナック菓子と飲料をベッドの上へ放り投げると、自分も飛び乗ってレイの隣に落ち着いた。
「レイ、その格好で観んの?」
 制服を脱ぎ捨てて、上下ともにインナー姿になっていたシンが、制服を着込んだままのレイに言う。
「俺は、これでいい」
 つぶやきながら、ブーツだけは脱いで両足をベッドの上に上げた。
 隣では、シンがスナック菓子の袋を開けていた。
「…毎度言うが、ベッドの上で物を食べると、クズが散らかって都合が良くない」
「今晩はレイのベッドで寝るからいい。明日片づける」
 そんな明日はやって来ない。定期的に清掃に訪れるキーパーに押し付けるつもりなのは、火を見るより明らかだ。十六にもなって恥ずかしくないのか、とシンに言っても始まらないのである。
「俺はいったいどこで寝ろと」
「レイはレイのベッドで寝ればいい」
「今晩は、しない」
「誰もやるって言ってねーだろ。床を共にしたら交わるって決まりでもあんの?」
「…身勝手な」
 シンの顔が急に暗くなった。というのは、心理描写ではなく、シンが部屋の照明をリモコンを使って落としたのだ。
「こんなに照明を落とす必要があるのか」
「必要あるよ。映画観るのに暗くないと雰囲気出ねーもん」
 返す言葉に詰まったレイが哀れになったのか、シンが可愛げのあることを言い出した。
「……もっと、くっつく?」
 うん、とレイはうなずいた。
 シンがレイに擦り寄って、二人は体の側面をぴったりとくっつけたのだった。


 ……TO NEXT.


posted by 百武 晶 at 22:57| Comment(0) | TrackBack(0) | SEED-D AnoterSide SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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