2005年09月28日

SEED-D 48話SS-2「メタファー」

「ニアデス」の続き。
長いけど、後生だから読んでください。こっちがメインですから。
レイによるシンへの支配。ところがどっこいシンの洗脳返し発動。
シンが自己主張する。
シンの出した答え。レイが自分で気付いた真実。

・やおい。
・レイシン。
・18歳以下閲覧禁止。
・無断転載禁止。

二話構成。これで完結。
あたし、これが最終回でいい。



        「メタファー」


 ヘヴンズベースを落としても戦争は終わらなかった。
 ロゴスの首領を亡き者にしても同様に、答えは得られなかった。
 思っていたように道が開けず、加えて激しい心理的動揺の連続に、シンのあらゆる意欲は下降線を描いていた。モチベーションが最低の状態だ。
 シンの精神も限界に近い。もう、さほど持ちこたえられないのかも知れない。
 本当のところは、俺にはわからないが…
 
 甘い話を信じないシンは、デスティニープランに対しても懐疑的だった。
 何度か内容を話して聞かせたが、興味がないよ、と上の空になる。
「遺伝子の適性に見合った役割をこなし、能力を発揮するお前は、デスティニープランの申し子のようなものだろう。ここでこうして生きるのに、なにか不都合を感じたことはあるのか」
「俺がこの役割に収まってるのは…とにかく、壊したかったから…戦争をこの世からなくしたくて…それだけを思ってだよ。俺の心は自由でもないし、この生き方に喜びはないよ」
「なぜだ? 運命に選ばれ、世界に選ばれたおまえが」
「レイこそ、どうしたの急に…こんな、突拍子もない計画を信じてるだなんて。正しくて、間違わないレイが、どうしてこんなバカげた話を」
 終始うすぼんやりとしていたシンは、疲れたように目を伏せた。
「バカげた…? ギルの望む世界が馬鹿げているなどと、よくもそんなことが言えたな!」
 逆上した俺は、目をつり上げてシンの胸ぐらを掴み上げた。
「…議長のこととなると、ホント、レイは人が変わるな…二重人格?」
 へらへらと力なく笑んだシンを、突き放した。自分の浅はかさを恥じた俺は、背を向け、気を静めようと深呼吸をした。
 背中でシンが言う。
「レイは、ずっと俺に何が正しいか教えてくれたじゃない。間違ったことなんか一度もなかった。正しくて強いレイは美しかったよ。俺にはとても自由に見えた」
 考えると頭痛が来るといって、沈思することから逃げるシンが、饒舌に自分の考えを話そうとしている。今まで、シンは誰にも心を見せなかった。俺にも見せようとしなかったのだ。
「出来ることだけやってればいい世界って、きっと楽だと思うよ。自分に何が出来るか、出来ないか分かって生きられるなんて、無駄がなくって、悩む必要がなくって? そういうのが幸せなヤツもいるかもしんないけど…」
 シンは更に言葉を継いだ。
「変わる自由がなくなる。あんな目に遭うまで、こんなんじゃなかった俺は、悪い方に変わってしまったけど…他の誰かは良いように変わることが出来たりするかも知れないじゃないか。議長の言ってる世界は、人間の可能性を摘み取る。自由を奪う。俺はそう思う」
「その可能性を勘違いした愚か者が…悪を行う。欲望を暴走させる」
 俺は拳を握りしめ、低く唸った。
「暴走の結果がおまえの憎む、戦争だ。身の程を知らぬ生き物は自由を履き違えて高望みする。禁忌に手を伸ばす。人に欲望は不要だ」
「ほんとうに、新しい世界には戦争が起きないのか、議長はそれを証明してくれんのかな?」
「おまえは、デスティニープランが導入される世界を拒絶するのか?」
「………」
 シンは答えを返さなかった。振り返って見ると、ベッドに腰かけ、顔を俯かせていた。
「ならば、議長のためには、もう戦わないのか。戦えば、自由がないとのたまった世界の実現が、また一歩近づく。それとも、議長を討ってプランの実施を阻止するか?」
 口調が、知らず脅迫めいたものになった。シンの怯えたような赤い目が、前髪の隙間から覗いた。
「その時は、俺がおまえを殺す」
 シンの肩が、いや、全身が震えた。
 さあ、答えろ。シンをねめ付ける俺の両眼は、蒼炎に燃えていた。
 アークエンジェルへ行くなどと言ったら、この場で殺してやると思った。
 部屋が、静寂と緊張に包まれた。
「…俺は…どうでもいいんだ……そんなの、どうなったって知るもんか。戦闘になったら出撃する。墜とせって命令されたら、それを墜とすよ」
 シンが俺を見上げる。俺の目を真っすぐ見据えて、訴えるように言った。
「だから、レイ…そんな怖い顔しないでよ…」
「そうか。ならいい。しかし、それではおまえ、言っていることが矛盾しているぞ」
「…いいんだ、俺、バカだから…」
 シンは笑おうとしたが、失敗したようだった。
「俺は、俺以外の何にもなれなかったんだよ」
 自分をあざ笑うかのように零したつぶやきの意味が、俺にはよくわからなかった。


 体がおかしい。まるで他人から借りてきたように、違和感を覚える。苦痛だ。
 俺は、体内で起こっている異変について、考えないわけにはいかなかった。
 時間が余りない。

 シンは俺が薬を服用していることを、しきりに気にしていたが、直接触れることはしなかった。踏み込む勇気がないのだ。俺から打ち明けてくれれば、と都合の良い成り行きを期待しているのが関の山だろう。
 俺が自ら告白することはない。自身の傷を癒すので手一杯のシンに、俺の闇を背負わせるなど不可能だ。事実を受け止めきれるとも思えない。要らぬ負担はかけてはならない。
 それとも俺は…シンの反応を見るのが怖いだけなのだろうか。
 偽造された命を、人間の複製の存在を、あいつはどう思うのだろう。
 シンはあれでいて『嘘』が嫌いだ。

「おまえが、俺に話だと? おまえが?」
 整備士の連中や、一般兵の緑がいる前で、俺に侮蔑した態度を取られ、シンは憤慨で頬を赤く染めていた。
 シンの肩越しに、ルナマリアの姿があった。俺へ険を含んだうざったそうな視線を向けている。分かり易い女だな。だが、こいつも軍人の端くれだ、フェイスの権力を知らぬはずもなく、大した障害にはなり得なかった。愚かなのは、シンが一時の感情に走りやすく、その反動で冷めるのも急速な上、区切りがつくと執着をしないという、淡泊な側面を持つのを理解していないことだ。
 そして、哀れなのは、シン・アスカという人間が、俺なくしては成り立たないという事実を知らないことだ。
「そうだよっ。この俺が、レイに、話があるんだ」
「プランについての話なら、もう終わったはずだが。気が変わって、一度受け入れたものを撥ね付けるつもりじゃあるまいな。みっともない」
 冷たくあしらえば、怖じ気づいて引き下がるかと思ったが、そうは行かなかった。珍しく、シンが俺に対して強気に出たのだ。
「違う、大事な話だ。今しなきゃいけないんだ」
 何を話したいのか、おおよそは予測できた。かわすのは無理なようだ。俺は部屋で話すことを了承せざるを得なかった。
 予感は的中した。
 部屋へつくなり、シンはベッドサイドに飛んで行くと、ストレージから薬の容器を引っ張り出し、俺の眼前に突きつけた。
「この薬、いったいなんの薬? レイ、どっか体が悪いのか?!」
 透明な容器の中で、白と青のカプセルが踊った。幼い頃より毎食後、必ず飲むように習慣づけられていた薬だった。
「…サプリメント」
 俺は白々しくうそぶいた。
「嘘つけ! だまされるもんか、隠そうとしたくせに」
「知っていたのか、俺が薬を服用しているのを」
「…ミネルバに来てから。アカデミーの頃は気付かなかったけど。どうしても訊けなかったんだ。詮索したら、その…気を悪くさせると思って……」
 意外だ。他人のことを観察するほど、注意深くもないシンが、そんなに早くから気がついていたとは。軽く感動すら覚える、と…
 こんな時に、タイミング悪く、眩暈が襲った。
「レイ…?」
 ふらつく頭を抱え、俺はよろめきながら、どうにかベッドへ座り込んだ。痛い。どこがどうというのではなく、敢えて言うと、体の組織すべてが悲鳴を上げているようだった。細胞が我先にと死んで行く、そんなイメージが頭を侵食した。
「レイ、どうしたの、レイ! まさかほんとに? ほんとにどっか悪いのか。な、なんで?
何のためのコーディネイター処置だよ。病気の心配をしないで済むのが特権のようなもんなのに!」
 シンが騒々しくおろついた。
「……落ち着け、シン。すぐに…おさまる」
「だって、レイ…この頃、よく調子悪そうにしてるから…」
 その原因が知りたくてついに我慢が出来ずに、こうして直に問いただしたらしい。
 俺はどうやらシンを見くびっていたようだ。シンは思っていた以上によく見ていたのだ。俺のことを。
「おまえの前では、見せないようにしていたのにな…」
 症状が悪化して、それもままならなくなった。
 小さい前兆のような変異は、生きることに然したる枷にはならなかったにしても、この数年の間に既に起こっていたのだ。
「レイ…本当のことを言ってくれよ。俺、だいじょうぶだから…」
 シンが覚悟をしたような目をした。
 俺は吐息した。
「俺は、遺伝子に生まれつき欠陥がある」
「なんで…? そういうのを修正したり、悪い因子を取り除かれて生まれてくるのがコーディネイターじゃないの…?」
 シンは怪訝な色を隠さない声で続けた。
「まさか、レイ…ナチュラルだったとか言わないよね…?」
「おまえは…俺の能力をそんなに低く評価していたのか?」
「じゃあ、あの、強化人間?」
 俺は、かぶりを振って否定した。
「…それは致命的な、命に関わる欠陥だ。その欠陥が俺の短命を決定づけている。いつ、命が尽きるかわからないが、時間が残り少ないことだけは確かだ」
 破音がした。シンの手から薬の容器が滑り落ち、床に跳ねたのだ。俺は横たわったそれの中身を凝視した。
「なんだよ、それ…つまり、レイは死んじゃうってこと?」
「そうだ。症例が皆無に等しいからな。明日死ぬのか十日後なのか、肉体の崩壊がどれ程の速度で進むのか、俺にも誰にもわからない……新たに開かれる世界を、この目にすることができないかもしれないな。それだけが心残りだ」
 あはは…、シンが乾いた笑いを放った。
「いきなりそれ? レイ死ぬんだ? 戦場に出撃してヘマを踏なくても、放っておいたら死んじゃうんだ……なんだよ、淡々として、昔見た映画のあらすじ話すみたいに」
「それが俺の運命だ」
「だからって、だからって……レイは現実をありのまま受け入れ過ぎる。たまには、俺みたく現実を拒絶してみろよ」
 シンは自分で、現実から目を反らし続けてきた自分を皮肉った。
「運命は変えられない。この世には人の手ではどうにもならないことがある。生命は仮初めに操れたとしても、死については手出しができない」
「でも!」
「シン、聞け」
 俺はあくまで淡々とした口調を守った。シンは、気にくわないという表情だ。
「俺が今、こんな話をしたのは、おまえに後のことを託したいからだ。俺の意志を継げとまでは言わないが、俺が成し遂げたかったことを、おまえにしてほしいと思う」
「勝手だ。遺言なんて卑怯だ。そんなもの、守ってやるもんか」
 シンは俺の切実な願いを、いとも簡単に蹴ったように思われたが、その赤い瞳に、怒りややるせなさといった複雑な心情が見て取れた。
「最後ぐらい、俺の頼みを聞いたらどうだ」
「俺はイヤだ、レイが死ぬなんてイヤだ。おまえ、死ぬのが怖くないのか。俺は怖い。死ぬのが怖い。死にたくない。だから戦う。生きたいから、死んでなんかやるもんかって思うから、向かってくる敵は全部墜として来た。俺は、どんな無様で惨めな姿さらしても、生き残らなきゃならないんだ」
 俺は、自分のためと思って戦ったことは、一度たりともない。
 いつも、すべてはギルバートのため。新たな世界を実現するため、だった。命は惜しくなかった。頭にあるのはそれだけだった…はずなのに。
「死ぬのが運命だとか、仕様がないとか言うな。生きたいって言え」
 シンが、声を震わせて、俺に死ぬなと言っている。
 正しく強く美しいという、俺の姿を写した偶像の輪郭が醜く歪んだことを、嘆いている。
 運命を諦め、死を黙して待つ俺を、悲しんでいる。
 でも、どうしようもないだろう? シン。
 現実を拒絶しても俺の命は長らえるわけじゃない。生きたいと主張したところで、滅びゆく肉体が再生に向かうわけじゃない。
 とうにわかっていたことなのに、シンの感情にさらされて、ひどく胸が締めつけられた。
「レイ!」
 張りつめたようなその表情から逃れようと、俺は顔を伏せた。

「…ヒトの未受精卵の核を取り除き、ある人物から採取した体細胞の核を移植する…それが細胞分裂し始め…そうして、最終的に何が出来上がるか、おまえは知っているか」
 シンは俺の目の前で立ち尽くしていた。
 その姿は、石壁に囲まれた牢獄で膝を抱えて泣いていた、過去の俺を思い起こさせた。
「クローン人間」
 ぼそりとシンがつぶやいた。
「俺は、その『ある人物』と同一の遺伝子を持つ、クローンだ。クローンはとある呪いを克服出来ない。老化遺伝子、テロメアを…俺の欠陥とはそれだ」
「……だって、クローンの製造は法律で禁止されてる…そんなの俺でも知ってる…」
「人の欲望の成せる技だ。倫理に反し、道徳を犯そうと、己可愛さの余り何でもする。こんなことはもう繰り返してはいけない。俺が、それを終わらせなければ意味がない。意味が、ない」
 俺はビクビクと痙攣する両手で、シーツを握りしめた。何かに縋り付いていなければ、自身を保てないような錯覚があった。
 シンは、そんな俺の様子を見ていられなかったのか、眉を曇らせて俯いていた。
 沈黙が続いた。先に口火を切ったのはシンだった。
「俺、ずっと思ってた。レイはポスト議長で、いつか世界を支配する帝王にでもなるのかなって」
「まさか…俺に、そんな野望は…ない」
「なんでも上手くこなせて、綻びのない完璧なレイが、どうして悲しそうなのかわかった。自分の運命が憎くて悲しかったんだ」
 俺とおんなじだね、とシンは言った。
「おまえは、嘘偽りを嫌ったな…クローンという、特定の人間の紛い物を、許せるのか」
「レイ、俺は……」
「俺は何だ…? 生まれたといえるのか、生きているのか?」
 シンの声を遮って、俺は早口に、心の澱みに埋没していた問いの答えを、シンに求めた。
 その問いには、己の存在価値そのものの是非がかかっていた。
 答えがあってないような、個人の思想や主観に頼る問いは、重すぎてシンを押し潰してしまうのではないかなどと、懸念する余裕はなかった。
 シンは逃げるかも知れない。問いから、俺から。
 俺は、必死ともいえる形相で、シンを見上げていた。
 シンは、まばたきもせずに、じっと俺を見つめ返していた。
 俺の、青と称すには薄い、天色の瞳を、その奥に本心を見ようとするかのように。
 俺の目を天色と言ったのはシンだ。至上の天空だと。シンは、いつも俺を、いいように言い表した。
「レイ。…レイは、レイだ」
 シンの声は迷いがなく、初めて聞く声のように力強さを帯びていた。
 その答えを、俺は幻聴のように聞いた。
 切望していた答えを与えられて、俺は、自分の耳を疑っていたのだ。
「レイは嘘なんかじゃない。誰が何と言ったって、レイは俺にとっての真実だ」
「おまえ、俺を…真実だと信じるのか」
「信じてる!」
 感情を解き放ったシンが、体ごと俺に飛びかかった。俺は、シンの成すがままに、その腕に首を圧迫されながら、ベッドへ仰向けに倒れ込んだ。
「もういい、もういいんだ。レイは悲しい生き物なんかじゃない」
「シン……」
「僕は、僕は…レイの微笑みにいつも救われてたんだ。本当だよ。だから、お返しに今度は僕がレイを救うよ」
 シンが優しく俺を包み込む。
 ああ、あったかいな…
 俺の凍てついた心の拘りが、溶かされほどけてゆくようだ。溶け出した感情が胸を一杯にする。この感情は一体なんだ?
「レイ…前に、裏切らなければいなくなったりしないって、置いて行かないって言ったことを覚えてる…?」
 シンが、俺の額に額をこすりつけた。声を零す唇が、唇に触れそうで触れない。吐息がくすぐるのがじれったかった。
 いつか、そんなことを言ったような気がして、俺は小さく頷いた。
「…僕は、レイを絶対に裏切ったりしない。なのに、レイはもうすぐ大人しく死ぬって言う。レイは僕に嘘をついたことになる」
 俺は、シンの実直な瞳に至近距離でさらされて、答えに窮した。
「そうだよ、僕、レイが言った通り嘘がキライだ」
 シンの剥きだしの感情は、嘘偽りを寄せ付けない。俺はそれに逆らえそうになかった。
「もう一度訊くよ」
 シンは俺の首筋に顔を埋め、囁くように言った。
「レイ、死ぬのが怖い?」
 左肩に、言葉を刻むシンの顎の感触がする。耳のすぐ横で、シンの甘く柔らかな声がする。それらの気配に瞑目した俺は、暗示にかけられたように、頷いていた。
「レイ、ずっと生きていたい?」
 シンの声が暗闇に響く。
 その声はある意志にみなぎって、俺の胸裏の奥まで分け入り、最後に残ったしがらみを断ち切った。
「俺は、俺は……」
 俺は、目を開けた。そこに、暗闇はなく、ギルバートの姿も、俺を迎えに来た男の姿もありはしなかった。いたのは、俺の答えを待つシンだった。
「俺は死にたくない、もっと生き続けたい」
 それが、俺の奥底に眠っていた確かな真実だった。
 俺は、居場所をなくしていた腕を、そのとき初めてシンの背に回し、細い体を思う様抱き締めた。
「レイ…!」
 シンの温もりが、かすかな汗のにおいがする。
 掛け替えがなく、愛おしい。俺が出逢い、見つけ、手に入れたもの。
 俺は、シンを快楽に捕らえるためではなく、この胸を満たし、溢れだそうとする感情を伝えるために、口づけを求めた。
 シンはそれに応じ、俺は半身を起こすと、膝に乗りかかったシンに口づけた。
 俺の吐息と、シンの鼻へ抜けるような声に、濡れた音が混ざり、重なる。
 熱い舌を絡め合い、甘ったるい蜜を分け合って、別れた。
「俺、レイが信じろというなら、議長を信じてもいい。レイが望むなら新しい世界を守るために戦ってもいい。俺がそうすることでレイが救われるんだったら、それで構わない。そこで生きよう、一緒に。強くなるから、俺。だから、レイも強くあって」
 シンは立ち上がって向き直ると、そう穏やかに言った。
「シン…:」
 そして、シンは俺に向かって手を差しのべた。
 俺は、その白い手のひらの上に、手のひらを重ねた。どちらともなく指を絡ませ、強く結び合う。
「運命を受け入れて死ぬなんて、そんなのやっぱダメだ。生きなきゃ、俺たち」
 シンが手を引く。俺はその場から立ち上がった。

 俺が誰に望まれ、生まれてきたのか、それはわからない。
 けれど、シンが俺を望むというから。
 だから、俺にはそれでいい。
 シンが俺を信じるというだけで、世界は輝きを放つ。

 シン…
 この世界で終わりを迎えても、その時は共に新たな世界を目指そう。
 そこは、痛みも苦しみも悲しみも、憎しみもない、心休まるところ。
 光あふれる世界だ。



 THE END.




  POSTSCRIPT

・…捏造部分について解説した方がいいんですかぃ。いや、ちょっともう気力がね…
・こんなの書いて、よけいに悲しくなってやんの。ばかじゃん。
・「ネペンテス」のラストにて、シンはフリーダムに裁かれるのもやむなし、罪深い自分はいつか滅ぼされるべきだと、死を待つような科白を吐いていましたが。その後、誰も死んでいなかったことがわかって、キレましたよ。
「バカにすんのもいい加減にしやがれ、おまえら、みんな死ね!」 と。
よって、あのしおらしい覚悟は無効です。死んでたまるか、殺されたって死んでやるかと、逆に生きることへの執念を呼び覚まされたのです。ほら、うちのシンは性格がいいから。戦争を終わらせたいってのも、体の良い建前でね、本当は破滅的な願望を隠し切れないでいるんだよ。レイにはそれを見抜かれてるんですよ。
・シンの本性はご存知のように「僕」です。
・ああ疲れた。お疲れさまでした。
・この後、ちゃんと49話見ないと…あたし、また楽しい話書けるかなァ……ぐはー。


posted by 百武 晶 at 14:30| Comment(0) | TrackBack(0) | SEED-D小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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