2005年11月02日

SEED-D 50話SS「ルート:デス」

史上稀に見るグダグダっぷりを見事なまでに見せつけてくれた最終回の捏造です。
あんなもの、認めてなるものか。

てなわけで、レイシン解釈による、レイシンのための最期。
48「ニアデス/メタファー」を受けてはいるけど、あれはあれで完結しているので、完全な続編とはいえない。

シンによるモノローグ。

命、尽き果てるそのとき、シン・アスカは何を思ったか。







 だって、レイが言ったから。
 間違ってばかりの俺のことを、
 おまえは悪くないと。

 レイは俺を排斥しなかった。
 穏やかな静寂と、微笑みで俺のありのままを受け入れてくれた。
 それは、議長の忠実な手駒として機能させるための作為だったかも知れない。
 思惑と意図がもたらした幻想だったかも知れない。
 けれど、最後は抱き締めてくれた。キスしてくれた。
 俺とレイは一つだ。そうやって生きて行くんだ。
 何一つ掴めなかったこの手が、レイの手だけは繋ぎ止めることができたって思っているから。
 今だって、握りしめてある。そう信じてる。
 俺が何を信じ、真実と定めるかは、俺の自由で勝手だ。
 俺の真実は、俺が決める、俺だけのものだ。


 無音の宇宙にレジェンドの壊破する爆鳴が、断末魔の絶叫のように上がった…
 そんな錯覚があった。
 あるはずのない、鼓膜をつんざき、脳裏に突き抜けた鋭い痛み。
 彼方で吹き上がる死火を、俺は瞬きを忘れて瞳に刻み付けていた。
 レイが俺の名を叫んだんだ。
 時も場所も感覚さえも越えて、それが、わかった。
 歯を唇を噛みしめる。眼前が朧に霞む。全身が震える。喉が焼けつくみたいだ。
 俺は、泣いていた。
 でも、涙を拭う手はもうない。
 自身で止める術もない。
 レイは漆黒の闇に還ったんだ。
 ギルバート・デュランダルの用意した盤上の駒は残り一つ。
 俺が最後。
 俺がここでメサイアを守り切らなければ、レイの望んだ世界が来なくなる。
 泣いてばかりもいられない。
 目の前に立ちふさがった敵を見据えた。

 アスラン・ザラの言葉は俺には届かない。届くわけがない。
 俺に届くのはレイの声だけなんだ。
 それを知らないアスラン・ザラは、交戦中も引きも切らず言葉を投げ掛けてくる。
「うるさい、黙れ! 俺は新しい世界を実現させなきゃいけないんだ、邪魔するなぁ!」
 レイにジャスティスを今度こそ墜とせと言われたのに、相手はいつも以上に手強く、俺の有利に持ち込むことすら難しい。戦況は芳しくなかった。
 こんな奴、とっとと片づけないと、行く手を阻むもののなくなったフリーダムがメサイアを落としてしまう。気持ちばかりが焦った。
「シン! お前は洗脳されてるんだ、そのことに何故気付かない!」
「洗脳だ…? バカにすんな! これは俺の意志だ、俺自身が望んだことだ!!」
 レイ、レイ。
 胸のあたりが痛くて呼吸が苦しいよ。息が上手く出来ないよ。
 ううん、そうじゃない…胸の、もっと奥の深いところが痛くてたまらないよ。痛みを止めてよ。
「そう思うように仕向けられているのが、まだわからないのか! 自らの意志と思い込んでいるのは、偽りのお前だと! 疑え、そしてもう一度探せ、自分の中の真実を!」
 きっと、引き裂かれた魂が悲鳴を上げるから痛いんだ。
 その傷口から赤い水があふれ出してる。それはすぐに流れを作って、赤い水たまりになり、やがて赤い海になる。
「うるさい、うるさい、…うるさ…い!」
 その前に血を止めてよ、レイ。俺には止める方法がわからないよ。どうすればいいの?
 このままじゃ、俺は、俺の流した血の海に溺れて、窒息してしまう。
「新しい世界とは、お前の望んだ世界ではないだろう!!」

 なんだよ…知ったような口きいて…
 お前に何がわかるんだよ。俺の、いったい何が。

 誰かのために生きたいって。
 誰かを思うこと。誰かの思いを理解すること。
 それも洗脳?
 俺の頭の中はレイへの思いと、レイから貰った思いでいっぱいだ。
 
 心が脳にあるならの話だけど、そういうことだろ、結局。
 
 恋でもなく愛でもない。
 生きて行くためにレイが必要だった。
 レイの声が、言葉が俺の世界だった。
 魔法のように心地よく胸に響く言葉が、俺の求めるままに都合良く形を歪められた真実であったとしても、心を制御する能力に乏しい俺を支えたのは、事実だ。
 客観視すれば間違っていたことが、俺たちにとっては間違いじゃなかった。
 俺を生かしたのはレイだ。
 だから、それをそういう風に言われたくはない。
 
 俺のやろうとすることが、
 俺の真実を曲げることになっても。
 真実の形なんかいくらでも変容する。
 一つでもない。
 必ずしも、真実を優先させることが、信念を貫き通すことにはならないって…それを知った。

「俺が…レイが…お前らなんかに、誰に、わかるもんか! レイが信じた世界だ、俺はレイに託された役目を果たす! 俺がレイの願いを叶えるんだーーーー!!」
 俺は、叫んだ。声帯が千切れて飛ぶほどに。
 体中が熱くて燃えるようなのに、頭の中はひどく冴えて、静かだった。
 なにかが弾けた。
 目がよく見え、耳がよく聞こえ、世界がクリアになった。
「シン、お前…なにを……?」
 アスラン・ザラの小さな迷いが、ジャスティスに一瞬の隙を生んだ。デスティニーの蹴撃が胴部に入り、ジャスティスが初めて体勢を崩した。
 絶対の好機だった。
 殺意に取り憑かれた俺は、振り上げたアロンダイトでジャスティスに留めを差すことしか頭になく、接近するフリーダムの機影に気づけなかった。
 どうして、上には上がいるんだろう。
 高エネルギービームライフルによる初撃でデスティニーの腕が武装ごと吹き飛ばされ、後はもう為す術がなかった。フリーダムの放ったドラグーンが八方を取り囲み、各端末から次々と発射されたビームが、機体を蜂の巣にした。
 爆発の衝撃の中で指先ひとつ動かせないうちに、フリーダムが近接していた。振るわれたのは、やっぱり裁きの剣なのだろうか。
 フリーダムのモーションは、やたらとスローなんだ。まるでコマ送りで再生した白黒映像みたいだった。なんか、嘘みたいだなって思いながら見てた。
 ゆっくりと降りてきたアンビデクストラス・ハルバードが、切り裂いた。
 デスティニーを。
 俺を。

 奪われるばかりの俺が、こんなところで、一番守りたい約束までをも奪われるのか。
 
 憎み、抗い続けた『運命』に、肝心なところで従うようなマネしたから、天罰が下ったのかな。
 それとも、学ばない者は何も得られないってやつ…?
 俺は。
 俺は奪われるばかりじゃなく、たくさんのものを奪ってきた。
 たくさん壊して、たくさんの命を消し去って、顔も知らない誰かに恐怖と悲しみの種を植え付けた。種はやがて芽吹き、新たな怒りと憎しみの花を咲かすだろう。
 俺は、二度と俺のような思いをする人間がいないように、そう願って戦争をこの世からなくそうと形振り構わず戦いながら駆け抜けた道の跡に、たくさんの『俺』を増殖させてしまったんだ。
 バカだな。本当に俺はバカだ。
 守りたいもの、守れなかったその理由なんて、とっくに分かっていたのに。
 わかっていたけど、もう、俺は後戻り出来ない場所まできていたから。
 せめて、レイを救いたかった。
 最後にたったひとつ残された大切なものを生かしたかった。

 レイ、ごめんね……
 レイを救ってくれる世界。
 レイが望んだ、レイを悲しみから解き放ってくれるはずの世界を、俺、呼ぶことが出来なかった。
 でもさ、ほんというと、ちょっとだけほっとしてる。
 レイのいなくなった世界に、俺はなんの価値も見いだせそうにないんだもの。
 出自にまつわる過去を告白されてから、俺、考えたんだよ。
 今までの人生でこれ以上ないくらい頭使って考えた。
 やっぱりどこを探しても、レイがいない世界で俺だけ生き続ける意味を一つも見つけられなかった。
 一緒がいい。一緒に生きていたかった。
 答えはそれだけだった。

 …なんだ、俺。
 レイのために、レイのためならって…そういうことだったのか。
 レイがいとおしいんだって、
 そんなことに今になって気がついた。
 バカみたいだけど、本当の気持ちを知って切ないとか、やるせないとかはないよ。
 俺、レイのために何かしたいって思えて良かった。
 成し遂げることは出来なかったけど、そう思えたことが幸せだ。
 誰かをいとおしく思うなんて、もうずっと思いだせなかった、懐かしい感情だ。
 取り戻せて、うれしいな。
 レイに…お礼、言わなきゃ……
 

 閃光の渦に包まれたコックピットの中で、俺が今際の際に目にしたのは、ただ、白色の光。他にはなにもない。音も感覚もなにも。
 デスティニーの両翼が狂ったようにミラージュコロイドを拡散させた。
 それは蝶の翅のように美しく、幻のように儚く、光放ち、どこまでも宇宙に拡がった。
 熱帯に生息するモルフォ種を思わせるメタリックの輝きが、暗闇を凄まじい早さで走って、そして名残を残さず消滅した。
 俺の命が炸裂した証だった。
 願わくは。
 この、火宅の世界から、レイと俺を解き放って。
 白い光のその向こうへ、手を、伸ばす。
 
 レイの名前を呼び続けたら、レイの所へ行けるのかな?
 それとも、泣き続けたら、呆れたレイが涙を拭いに、俺のとこまで来てくれるだろうか……?


 レイ。
 次の世界でまた出会えたら、そのときはもっといっぱい話をしよう。




 「LOUTE:DEATH -with nirvana-」
  (051008)

 THE END.




  POSTSCRIPT

・私はどうしても片方だけが死ぬっていう、やるせなさの境地みたいな結末が嫌だったので、こうなってしまい…すんません……
・「メタファー」のレイは死ぬ気満々で、締め方もああだったから、これはその補完ていうか、シンからの返事みたいなものかなぁ、と思いつつ。
・で、死ぬ間際のシンというどん底の気分に落ちるために、宇多田ヒカルの「BE MY LAST」をひたすら聴いてたという。あの歌は悲しい。レイシンも悲しい。二倍悲しい。
・書き終えてから聴いてみたら、ラルクの「My Dear」(「AWAKE」収録)がそのまんまだった。借りたはいいけど一曲抜いてHDの肥やしにしてたアルバムを、慌ててMDに落として聴きまくりましたよ。これは泣ける。レイシン好きなら9分9厘泣くと思う。
・死のルートがあるということは、生のルートもあるわけで。それは日曜(6日)あたりにアップ予定。そっちはこれ以上にがんばったので、読んで頂けると嬉しいです。左のレイのアイコンからメールフォームが開くので、一言でも頂けるともっと嬉しいです。読んだ、だけでも結構ですよ?



posted by 百武 晶 at 20:27| Comment(0) | TrackBack(0) | SEED-D小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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