2005年11月07日

もしもレイシンが「シンデレラ」だったら。



「もしもレイシンが○○○だったら〜♪」(清涼飲料水のCMのウエト風)の第2弾。

私が楽しくなりたいがために書いてみた。だって毎日イヤなことばっかなんだもん。
書いてる間は楽しかったです。好き放題だから。
何も考えないで読めます。
疲れてる人向けです。
ネタとしてはやおいチックです。が、所詮書くのが私なので、エセやおいです。
サラっと流してますけど、18禁です

やっぱり、あのアニメはガン○ムじゃなくてギャグだったんだ、と改めて認識した次第。

*11/9 17:00更新で完結しました。



去年の秋に妻と娘を事故でなくしたアスカさんは、この春めでたく息子を連れて魔乳と再婚しました。別に魔乳の色香漂う未亡人っぷりや、乳のデカさにクラっときたわけではなく、あくまで息子のためを思っての決断でした。
魔乳さんには三人の娘がいました。上から、変な団体の教祖と祀り上げられているラクスさん、すぐに男をたらしこむ悪いクセのある次女のフレイさん、二人に比べればごく普通な一般庶民キャラとはいいつつ、男の寝込みを襲って刺そうとしたことがある三女のミリアリアさんです。
そんなこととは露知らず、よもや豊富な財産を目当てに近づかれたとも気付かずに、魔乳一家を屋敷に呼び寄せ、短い人生の春を過ごすアスカお父さん。
一人息子のシンは、母と妹をなくしてからというもの、人間不信の傾向が見られるようになっていたので、あいつらは絶対おかしいぞ、とひそかに柱の影からその様子を伺っていました。
シンの悪い予感はばっちり的中しました。
父が長期出張中に暴漢に襲われて死んでしまったのです。その途端、それまでそこそこ優しかった魔乳一家が本性を現しました。手のひらを返すとはこのことです。アスカ家の財産を手中に収めた魔乳と三姉妹はシンに辛く当たり始めます。
「あんたはもうこの家の長男でもなんでもないのよ」
「名前も今日から灰かぶりのシンデレラで十分でーすわー」
「下働きとして屋敷にはおいてやるから、私たちのために働くがいいわ!」
「男である必要もないから、はい、このメイド服着てね」
身包みを剥がれ、フリフリのメイド服を与えられるシン(デレラ)。それ以外を着ることを許されず、半地下のくもの巣の張った物置小屋に押し込まれました。
「女って怖ぇ…」
どうすることもできずに、毎日白魚のような手にあかぎれを作って下働きに励むシン(デレラ)。一日の仕事が終わって部屋に戻るともうくったくたです。成長期の身にパンと冷たいスープという貧相な食事ではとても足りません。
「オレ、悪くないのに。なんも悪くないのに…悪いのはあいつらじゃん」
いつか復讐してやる、と空腹をかかえながら恨みつらみに枕をぬらすのでした。
しかし、もっと悪いことがシン(デレラ)の身を襲いました。ある晩、魔乳の愛人であり、ちまたでも数々の浮名を流す、エンデュミオンの鷹とかいう名の優男が、シン(デレラ)がめずらしい黒髪であることを聞きつけやって来たのです。
「はーん、君がシンデレラ? 細くて白くてかわいいねぇ。ん? 初めて? いやぁ、なんでも初物はいいよね! それじゃ、お邪魔しますよ」
「いやーー!」
抵抗むなしく、あわれ初恋もまだの14歳のシン(デレラ)は、鷹さんに花を散らされてしましました。
初めこそ痛くてしくしく泣いていたシン(デレラ)でしたが、回数を重ねるごとに行為に快楽を覚えるようになっていきました。慣れって怖いですね。鷹さんはシン(デレラ)を善がらせる技術以上に、とても優しくしてくれたので、ちょっと好きになりかけたくらいです。この遺伝子と相性がいいのは否めないということですね。
鷹を送り込んだのは魔乳三姉妹の卑劣な企みでした。シン(デレラ)の仕込みが完了したと見るや、次々客を取って来て、シン(デレラ)に相手をさせるようになりました。ラクして一儲けしようという魂胆です。
銀髪からヘタレから体育会系からピアノ少年から仮面からキザな歌手っぽいのからヤク中から、まーとにかく同年代から壮年まで幅広くやってきては、シン(デレラ)をいいようにもてあそびました。
シン(デレラ)の具合は大変よろしいと噂がたったため、客が切れることはありませんでした。その器量が良いがゆえに、ああ、かわいそうなシン(デレラ)。シン(デレラ)。
「おかしいですわね…そろそろ追い込まれて、首をつるかと思ったんですけれど」
「ずぶといのよッ! あいつ、生まれ着いての淫乱なんだわ…私より男を取り込むのが上手いなんて、許せない許せないぃぃ」
「男としてのプライドはもってないクチらしいわね。一晩の人数、増やそうか?」
「こうなったら、搾り取るだけ搾り取りますわーー」
幸か不幸か、シン(デレラ)は屈強な精神力の持ち主で、いかに苛烈を極める環境であろうとも、順応してしまう生命力に溢れた子だったのです。
しかし、代償はありました。素直な心はすさんでしまい、がっちり歪みまくってしまったのです。こんな生活が一年も続くと、すっかりスレてやさぐれておりました。
「やっべー、オレ、マワされても平気になってきた。どうしよう」
と、早朝の井戸で汚された体を洗い流しながら、リンカンされても甘い声で鳴いてしまった昨夜の自分を思い起こして鬱るシン(デレラ)です。
なにが情けないかって、一人、朝日に晒されながら冷たい井戸水を被って、自分の身を自分で検分しなければならないのがどうしようもなく情けないのです。現実逃避は生きるために身に着けた自分を守るための特技ですが、このときばかりは現実に直面せざるをえないからです。
部屋に帰って、唯一の話し相手にグチります。
「アーサー、なんとかしろよ、アーサー…」
「えぇ! あんた、ネズミになんとかしろって、そんな無茶な」
「オレの友だち、おまえだけだ。なんとかしてくれよ、この生活」
「えええ! 友だちじゃなくって上官だから、上官ね!」
「アーサー。驚いてばっかないで、なんとかしろよ、アーサー」
アーサーは見ての通りのネズミです。シン(デレラ)が地下で駆除しようとしたのですが、突然変異かなにかで人間の言葉を話したことがおもしろく、生かしてやったのでした。聞けば、前世の記憶があるとかないとかいい、水を張ったタライに船のオモチャを浮かべて乗っけてやると、とても喜びます。重要なのは、シン(デレラ)の為に厨房から食べ物をくすねて来る勇気と気概があるということです。
「これが主人公の宿命なのか? 総ウケってやつなのか」
「いやぁ、たぶん、微妙に違うと思うんだー」
「こんなヒドイめに遭うくらいなら、オレ、主人公なんかじゃなくっていいよ!」
「うん、まぁ、シンデレラは主人公ではなかったよね」
「………」
ぐさっ。シン(デレラ)は手元のフォークをボロいテーブルの表面に突き刺しました。アーサーの尻尾が、歯と歯のあいだに巻き込まれていました。あぶないところです。
「うおぉわお……」
「なんか、名案をオレのために考えておくれよ、アーサー」
「…やっぱり、この家から出るしかないと思うよ。生活の保障をしてくれそーなパトロン候補でも客の中にいないのかい」
「うーん。めぼしいのがいねーなぁ」
シン(デレラ)は割と理想が高く、好みにはうるさいほうだったのです。嫌いなやつには都合でも尻尾を振りたくありませんでした。
「そういや、近頃性悪三姉妹が口々に言ってんだけど、ダンパがダンパがって。ダンパってなに?」
「ダンスパーティーの略だろ、そりゃ。舞踏会だ、舞踏会」
「ぶどう会? ぶどうをいっぱい食べる会? 超楽しそーじゃん、オレも行きたい」
シン(デレラ)は基本に忠実な子でした。
「えぇー! そっちじゃなくて、踊るほう。」
「なんだ、つまんねーの」
「あーーっ! そうだ、その手があるな」
アーサーは手をぽんと打って、一人で閃き、一人でなにやら作戦を練り始めました。シン(デレラ)のあずかり知らないところで、ネズミのくせに広いネットワークを生かし、一仕事しようとしているようでした。
「玉の輿でーすわ、絶対に乗ってみせますわっ」
「女帝よ、女帝! 王子の目にとまって、この国を支配する女帝になってやるわ!」
「まー、金髪碧眼の美形の見物にね。私、そのお付きとか、おこぼれにあずかれればいいし」
舞踏会開催当日がやってきました。結婚相手探しは国じゅうから美女を集めて派手にやるらしく、魔乳三姉妹もめかしこんで出かけていきました。
「いってらっしゃいましー」
ぽつり、それを見送るシン(デレラ)。アホらしくなって、手に持っていた雑巾を放り投げました。
「うごっ!!」
「あ。アーサー。おまえは、本当に間が悪いヤツだな」
雑巾の下敷きになってしまったアーサーを救助してやるシン(デレラ)。手の平に乗っけたネズミが二本足で立ち上がって、息を切らせ、身振り手振りで言います。
「裏庭に、すっごいの呼んどいたから、シンデレラも舞踏会行けるぞ、たぶん」
「まじで?」
確かに裏庭には、すっごいのがいたのです。
真っ黒な、つばの広い、てっぺんの折れ曲がった帽子を被り、胸もとがハート型に大きくあいたピッチピチのコスチュームに身を包んだ、シン(デレラ)よりちょっと年上のお姉さんが。
魔女だ。いわれなくても、あれは魔女ですよ。
目指しているのは、今流行の「エロかわいい」ですが、シン(デレラ)の反応は芳しくありません。同性にヤられまくってしまったからには、とっくにノーマルな恋愛はムリだと諦めていたので、異性に対して興味を持てなくなっていたのです。
「あたし、魔女のルナマリアっていうの」
「はあ、どうも。魔女ってほんとにいるんだ」
「シンデレラ? あんたもいろいろタイヘンね!」
半乳を揺らしながら近寄った魔女がシン(デレラ)の両手を取り、同情を示しました。歩くたびに超ミニからぱんつが見えますが、アーサー以外は誰も気にしていないようです。
「魔女のおねえさん、ぱんつ見えてるよ? 知ってる?」
「いいのよ、子供はそんなこと気にしないで。サービスなんだから」
「あ、そう」
魔女は衣装ケースを開けると、中からドレスだ何だを引っ張りだし、シン(デレラ)に投げて寄越しました。
「あんたも舞踏会に行くからには、それなりに化けていかないと。王子の花嫁候補になるんだから、女装してもらう必要があるわ!」
「えー。男落とすなら、これでいいじゃん。最強の戦闘服じゃん」
魔女は不機嫌なツラで、メイド服姿のシン(デレラ)の頭からつま先までを舐めるように眺めました。
「なんだったら、猫耳シッポもつけるか。この生活から抜け出すためなら、なんだってやってやんぜ、オレは!」
シン(デレラ)は腕をまくって息巻きましたが、魔女は吐き捨てました。
「アホね! 相手がただのバカ男ならそれでいいわよ。ところがどっこい、王子がたいそう偏屈者でね。奇抜を狙うと外したときのリスクが大きすぎるのよ!」
シン(デレラ)は大人しく魔女に従うことにしました。数分後、そこには美少女が立っていました。純白のヒラヒラなドレスに、腰まで届く黒髪のヘアピースを装着し、薄化粧を施されたシン(デレラ)は、紛うことなき美少女へと変身を遂げていたのです。
「うわぁぁあ!! シンデレラ、やばい、やばい。かわいい」
アーサーが地面から驚愕の声を上げていました。
「すっごい、シンデレラ。栗○千明みたい」
「オレが好きなレイは綾波じゃないよ」
「………」
「………」
わかりづらいネタはスルーされました。
「とりあえず、王子に見初められて、婚姻届に判さえ押させれば、あとで男とバレようがこっちのもんよ。難癖つけて慰謝料ガッポリふんだくってやればいいのよ!」
「ダマしとおせるもんなの?」
「そこはあんたの努力しだいよね。同性婚は認められてるわ。何でもアリなのよ、このプラントって国は。遺伝子いじくっちゃったアタシたちに怖いもんなんてないのよ」
「…やっぱ女ってこええ……」
女が強い家庭に育ったシン(デレラ)は、逆らってはいけないことも、よく知っていました。そのへんは利口です。
「格好はこれでいいとして、お城ってさ、宙に浮いてるじゃん。あんなとこ、どーやって行くわけ?」
「メサイアね。オホホ。そのへんも抜かりなくってよ」
魔女は高笑いを一つカマすと、胸元から携帯端末を抜き出し、操作し始めました。
「どうでもいいけど、こいつエロくね?」
シン(デレラ)の右肩に乗ったアーサーは、魔女の見事な乳間に目を奪われたまま、話なんか聞いちゃいませんでした。
「ほら、あれを見なさい! あんた、あれに乗ってくのよ、あれ!」
言うてる間に、遠隔操作された戦闘機が二人の頭上に現れ、うっとおしい暴風を起こしながら裏庭に着陸しました。なんとなくなつかしい、コアスプレンダーでした。
「なんか、オレ、これの操作方法知ってるような気が激しくするよ!」
意気揚々とコックピットに乗り込んだシン(デレラ)は、オートコントロールを解除し、自分向きに再設定をします。シートにもしっくり背が収まる感じです。
「シンデレラ! 言っておくけど、これは兵器ではなく、あくまで乗り物なのよ! そこんとこわかってるわね!!」
「えーー、合体しないの、合体ー」
「しねえよ!!」
魔女が鬼のような顔でがなっているのを尻目に、前世の記憶が蘇っちゃたらしいアーサーが「艦長ぉぉぉ!!」とむせび泣いていましたが、無視です。
「じゃあ、オレ、王子とケッコンしに行って来るよ」
「うまくやるのよ、シンデレラ!」
ハッチを閉じ、発進するコアスプレンダー。お屋敷とはいえ、民家の裏庭から戦闘機が離陸する光景は、穏やかな夕景としては異様でした。
あっという間に小さくなっていく魔女を見下ろしながら、シン(デレラ)がいいます。
「言ってもいい? あいつ、魔女のくせにいっこも魔法使わなかったな」
「うが! そういえば、そうだ…魔法の杖すら見当たらなかったような気がする」
「ただの酔狂なコスプレ女だったんじゃねーの?」
ネズミの呼んだ助っ人です。細かいことは気にしないのが吉だと思います。

メサイアことお城に無事乗り込むことに成功したシン(デレラ)とアーサー。メサイアは本当は秘密だけど機動要塞なので、戦闘機の発着場も完備されていたのです。
お城の中は美少女とその保護者でいっぱいでした。シン(デレラ)は場違いな雰囲気に気後れしながら、どことなくトボトボと歩いております。
「募集してるのは花嫁だから女ばっかだなぁ…」
うつむき加減に、周りを眺めやると、ばっちこん上目づかいになります。画ヅラ的にはかわいそうな薄幸の美少女にしか見えません。なんだかいじめたくなる感じが危険ですね。肩に乗ったアーサーが早速惑わされています。
「シンデレラ…すかーと、めくってもいい?」
理性と本能が、現実と妄想が、ネズミの小さな脳みその中でせめぎあっているのです。ハァハァ言ってます。ネズミといえどオス。あぶねーオヤジのようです。
「ヌッ殺すぞてめえ! ちょーし乗んな」
バイオレンス。シン(デレラ)は、アーサーを鷲づかみにすると、勢いを付けて床に叩きつけてやりました。アーサーは流血しながらも、しっかり純白のドレスの裾の中を見上げました。シン(デレラ)推定15歳の生足です。しかも、魔女は期待を裏切りません。ドレスに負けず劣らず純白の、女性もののランジェリーを身に付けさせていたのです。細かなレース編みはどっかの農村の職人が1針1針手で編み上げた高級品に違いありません。
「グッジョブ魔女!」
アーサーはまた流血しました。鼻からでした。ネズミも鼻血を吹くのですね。
「はいはい、催しにご参加の方は、エントリーをお早く済ましてくださいね!」
係員が少女たちを誘導していました。シン(デレラ)もその流れに乗って、受付へ案内されました。
端末のガイダンスに従い、ウソの必要事項を入力します。エントリーが済むと、アナログに、くじを引かされました。
「はい、91番のあなた、Dブロックにどうぞ! がんばって予選を勝ち抜いてくださいね。本選に進まないと、王子のつまさきも拝めませんよ!」
予選? 本選? シン(デレラ)とアーサーは揃って首を傾げました。
その意味は、会場を目の前にしてわかりました。そこは、豪奢なシャンデリアが幅を利かせたダンス会場などではなく、一面、畳の敷かれた柔道場だったのです。メサイアの中の、いわゆる武道館と呼ばれる場所でした。
そうです。王子の花嫁探しのダンスパーティーとは偽り、真の姿とは、花嫁候補の座を勝ち取るため、少女と少女がその力を懸けて戦う格闘大会だったのです。
「舞踏会ではなく、武道会!!」
しまった、と鼻血止めにティッシュを鼻に突っ込んだアーサーが頭を抱えました。
「してやられた、日本語ってムズカシイね! どこでどう伝わり間違ったのかな!」
「つーか、オレらが使ってんのって英語でしょ? 公用語英語でしょ?」
それを言ったらおしまいです。このネタが成立しなくなりますよ、ネタ殺しのシン(デレラ)。
この国の王子は、花嫁の条件に、ダンスが上手であることより、腕っぷしが強いことを望んでいるようです。自分を倒した者を花嫁とする、だそうです。つまり、最終的に王子と戦って勝たなくては、シン(デレラ)はあの魔乳三姉妹と夜の生活から逃れられないということです。
自分より強い嫁なんか、貰ったって幸せになれそうにありません。オレだったら十割の確率でごめんだ、とシン(デレラ)は思いました。この王子はバカか、それでなかったら、かなりのマゾなのでしょう。
「ガン○ムファイトみたいなもんか。わかりやすくっていーんじゃない?」
「ええ! そこ伏字にする意味あんのかい?」
「やってやんぜ!」
シン(デレラ)は、こうなったら何の意味ももたないドレスの裾を引きちぎって、暴れやすいようにしました。真っ白な、すらりとした足が惜しげもなく晒されました。でも、この美脚はジャスティスのグリフォンビームブレードも裸足で逃げ出すほどの破壊力を備えているのです。いろんなものを壊します。
戦いが、眠っていたシン(デレラ)の闘争本能を目覚めさせます。もともとシン(デレラ)は男の子ですから、目は血走っていてもへっぴり腰で襲い掛かってくる女子どもを叩き伏せることは、赤子の手を捻るようなものでした。戦うことに関しては、備え持ったスペックの高さが違います。
シン(デレラ)は力加減を知りませんでした。下働きで身に付いた繊細な筋肉が躍動します。いつか憎き三姉妹にかけてやる、と編み出した殺人技を、ここぞとばかりにキメまくります。シン(デレラ)は、目的のためなら女子供にも容赦しない、ある意味ジェンダーフリーな考えの持ち主だったのです。
「強い、強いよシンデレラ…鬼みたいだ、女の子相手に……サイテーだ!」
試合場の隅っこで、観客の足元に紛れ込んで観戦していたアーサーは、こぶしを握り締めて震えていました。まるで、シン(デレラ)が自ら築いた死体の山に立ち、両手を血にぬらしているように見えたのです。それは間違いなく前世の記憶でした。スプラッター。
そんな感じでシン(デレラ)はトーナメントを順調すぎるくらい順調に勝ち抜いて行きました。我が前に敵なし。オレの通った後に道はできる、くらいの勢いでした。
そしてとうとう決勝戦。念願の王子と雌雄を決するときがやって来ました。
「はーっ、はーーっ、おまえがぁ…おまえを倒せばオレの勝ちなんだなぁぁ」
この時になると、シン(デレラ)は正気を失っておりました。もはや王子が目の前に現れても、彼を敵としか認識できません。倒せば世界が平和になるのです。戦争が終わるのです。敵さえ倒せばよいのです。それがパイロットとしての自分の使命です。
王子がクール系の花も恥らう美男子で、自分のストライクゾーンだとか、そんなことすら分からない精神状態です。デストロイ。
「どこからでもかかってくるがいい」
涼風のような美声で、王子が言いました。
王子は王子だけあって、さすがに武道にも長けておりました。ここまで無傷で勝ち進んできたシン(デレラ)も、初めて床を這うことになりました。王子はすべてを見切っているとでもいうのでしょうか、柳のごとくしなやかにシン(デレラ)の攻撃をかわしてしまうのです。
追い詰められたシン(デレラ)。このまま負けてしまうのかっ。いいえ、そんなわけには行きません。どうしてもシン(デレラ)はあの生活から抜け出したいのです、自由に生きていきたいのです。その為には今、目の前の王子をやらねばならないのです。ヤられる前に殺れ。シン(デレラ)が不幸のどん底で学んだ教訓でした。
「オレは…オレはこんなところでぇぇぇーーー!!」
スイッチオン。ゆらりと立ち上がったシン(デレラ)の殺気が一気に集束しました。王子に向かって突進します。これまでとはまるで違う動きに、王子の反応が遅れました。
「うっわー種割れしちゃったーーー!」
アーサーだけが事情を把握してました。シン(デレラ)は生命の危機にさらされると、特殊遺伝子が目覚めて、一時的に人知を超えた力を発揮させることができるのです。セコイですね。
「オレのこぶしが光って唸るぅ、あいつを倒せと輝き叫ぶぅぅ、必殺シャイニングフィンガー!!」
「なんか乗り移ってるーー!!」
テンパりすぎたシン(デレラ)は、最終奥義のネーミングすら間違えてしまいました。本番に弱い子なのです。正しくは、パルマフィオキーナです。
それはともかく、シン(デレラ)の無茶くさい掌撃ですが、油断した王子は簡単に懐に踏み込むことを許したのです。捨て身の一撃必殺攻撃は、あっけなく王子のアゴに入ってしまいました。
出、会い、はースローモーーショーーン。ぶっ飛ばされ、宙を舞った王子の体は、ゆっくり床に崩れ落ちました。王子撃沈。
「勝った! オレ、勝ったよ! 父さん、母さん、マユ! 世界が平和になったよ、オレが戦争を終わらせたんだ!!」
だったら良かったのにね。こぶしを突き上げた格好で、感傷に浸るシン(デレラ)。前世と今世の記憶が交錯しすぎです。審判が寄ってきて、その腕を掴み、勝利宣言をしました。
「試合終了ーー、勝者、エントリーナンバー91番! 王子の花嫁ですぞ!!」
「あ」
歓声と拍手の中で、シン(デレラ)は我に返り、本来の目的をようやっと思い出したのでした。

トーナメントに優勝したものの、花嫁候補になったに過ぎません。将来の生活保障を完全なものにするには、とっとと婚姻届に捺印させなければならないのです。シン(デレラ)は通された王子の寝室で、魔女から受け取った婚姻届というペラい一枚の紙を、穴が開くほど見つめていました。
王子は、シン(デレラ)の一撃を食らって失神したっきり、目をさます気配がありません。
「きれーなカオだなぁ…」
ベッドサイドに頬杖をついて王子を眺めやったシン(デレラ)はため息を吐きます。
長いまつ毛は金ぴかで、透けるように美しい肌、通った鼻梁、バラ色の頬と薄いくちびる。およそ王子としての代名詞はすべて持ち合わせているような、そつのない作りです。
「顔殴んなくてよかった、ほんと」
ぶっちゃけ、シン(デレラ)の好きなタイプの顔でした。早く目を覚まして瞳の色を見せてはくれないか、と気持ちがはやりますが、
「必殺技の入りどころが悪くて、このまま眠り続けたらどうすんのさ?」
王子の枕元に立ったアーサーが、気分を台無しにしました。
「そうなると、花嫁から一転、犯罪者ですな」
「ここまできて、そんな展開ありえないだろ。だいいち、別の話になるじゃんか」
そうです。これ以上元ネタから離れたら、収集がつかなくなります。
「あぁぁあ!」
「今度はなに、なにに驚いてんの?」
アーサーが、壁の時計を見上げて口をあんぐりさせていました。もうすぐ深夜の12時になろうかという時分でした。
「のんびりもしてられないよ。12時になったら魔法がとけてしまうぅ!」
「魔法って。だから、あのエロ魔女は、いっこもオレに魔法かけてくんなかったじゃん」
「シンデレラってそういう話なのに……」
「あーあ、王子は目ぇ覚まさねーし。ヒマだなぁ」
気が抜けて、だんだん息苦しくなってきたシン(デレラ)は背中のファスナーをアーサーに下ろすよう強要しました。アーサーのいやらしい妄想など知る由もなく、両腕を抜いて、上半身を露出させます。ドレスが腰にだらしなく引っかかっている状態になってしまいました。
「格闘しまくったから、汗いっぱいかいちゃったよ。気持ち悪いよ。王子の部屋なんだし、シャワーぐらいついてんじゃねーの」
黒髪ロングのヘアピースまで床に投げ捨てたシン(デレラ)は、シャワールームを求めて部屋をウロウロし始めます。アーサーがまた、驚き芸をやっていたようですが、シン(デレラ)は気にしませんでした。
「シャワーなら、ベッドの後ろの扉の奥だ」
「あ、そうなんだ。じゃ、ひとっ風呂浴びてこ…よ……おぉ!?」
ベッド方向を振り返ったシン(デレラ)は、あまりのショックに全身を硬直させました。目を覚ました王子が、身を起こしてこっちを見ていたのです。
「おまえ…男だったのか……」
最悪です。考えうる限り、最悪の状況です、ピンチです。どう取り繕えばいいのでしょう。頼みの綱のアーサーは、無情にもベッドの下へと逃げ隠れてしまったあとでした。
「あ、いや、あのこれは…」
まだ婚姻届に判を押させてないのに、男だってバレてどうするんでしょう。厳しいトーナメントを勝ち上がった苦労が水の泡です。がんばったのに、ここまで来て、再び下働きとウリ専の生活に戻るのはごめんなのです。
「違うんだ、オレ、痩せの大食いで体脂肪率が低くって、胸がないだけなんだ! まな板なんだ立て板に水なんだっ!」
オレって言うてもうとるがな。アーサーの適切なツッコミもベッドの下からでは威力半減です。
いくらなんでもそこまで脂肪が一ミリもついてなさそーな薄い胸板の女子はこの世にいないと思いますが、あばらの浮いた真っ白な胸の前で腕を交差させながら、シン(デレラ)は必死に言い訳をしました。
ですが、神は残酷でした。もしかしたら神なんていないのかも知れません。シン(デレラ)の魅惑の細腰が、悩ましげにくねっと揺れたその拍子に、引っかかっていたドレスが腰から抜け落ちてしまったのです。ストン、と。ものの見事に。
なんということでしょう。
シン(デレラ)は今、勝負下着としての実力は抜群のランジェリー一枚という、あられもない姿で王子と相対しています。素肌を隠すものはレース状の面積のちっこい布キレだけです。それも股間のふくらみまでは隠してはくれません。男の子の証が、きちんと存在を主張してございます。
「うわーー、み、見るなぁ!」
ともかく存外純情なシン(デレラ)は羞恥心が先にたってしまい、その場にしゃがみ込んでしまいました。じーっと王子に凝視され、ちょっと肌に赤みが差してしまっています。
時計の長針は天辺から45度ほどズレた位置にありました。12時を回ってしまったのです。おバカなシン(デレラ)は、自ら魔法を解いてしまったのです。こうなっては、努力が実らず、空回りばかりする報いのない人生を呪うしかありません。
「もうだめだ…オレはなんでいっつもこうなんだ…うう」
根が暗いシン(デレラ)がそんな不幸な思考にのまれそうになっていた頃、王子が救いの手を差し伸べました。
「なにをそんなに気落ちする必要がある。こっちへ来てもっとよく顔を見せろ」
いきなり命令です。王子は俺様属性でした。悲しいかな、下働きの下っ端根性が染み付いていたシン(デレラ)は反抗することもなく、ランジェリー一丁で王子のもとへ飛んでいきました。
「あ、あの、あの!」
「男だったとはな……どうりでかわいいと思った」
「は?」
どうにか上手く言いくるめて婚姻届に判をつかせ、既成事実を作り上げてやろうと、ばかはばかなりに画策を脳内に巡らせていたシン(デレラ)は、面食らいました。
「直情をあらわにして突進してくるおまえの顔に見とれてしまったんだ」
不覚にも、と王子はスカした笑みをこぼしました。どうやら王子は、シン(デレラ)の殺気だった極限の形相に目を奪われたが為に、あの大振りな奥義をキメられてしまったらしいのです。
「もしかして、王子って男が好きなの?」
ストレートなシン(デレラ)の物言い。思ったことを速攻で口にしてしまいます。
「変態みたいな言い方するな。女という生き物が嫌いなだけだ」
「いっしょじゃん」
魔女が言ったとおり、この王子はかなり偏屈な性癖の持ち主みたいですよ。だいじょうぶでしょうか。
王子は世間体と家のしきたりのせいで、嫁をとらされることになったのですが、女嫌いの彼はそんなのは断固拒否です。両親の気を落ち着かせるのを目的に、自分より強いという条件付きで花嫁候補を募ったまででした。自分より強い女など、この世に存在するわけがないという確固不抜の自負があったからです。ゆえに結婚まで進展することは有り得ないと踏んだわけです。
「眠りながら、女に負けてしまってどうしたものかと考えていたが…おまえが男だというなら都合がいいな。俺の誇りも守られた」
「じゃ、じゃあ、オレのこと嫁にしてくれない? ケッコンしてほしいんだ」
シン(デレラ)はどきどきしながら、婚姻届を王子に見せました。しかし、王子は表情を曇らせて、そっぽを向いてしまいました。
「そういうのは後回しでいい」
王子は形だけのものが嫌いなタチでした。とにかく、身の保障を立ててもらいたい一心のシン(デレラ)は、肩を落としました。
「…王子、オレのこと嫌い…?」
どっちかいうと、そっちのほうが悲しいかも知れません。なんとなく、シン(デレラ)は王子に嫌われたくなかったのです。
「おまえ…シンデレラと言ったか。灰被りとは、人につける名前ではないな」
「オレの名前、そんなんじゃない。本当の名前は悪いやつに取られた」
「そうか…では、おまえの本当の名は、なんという?」
「シン。オレの名前は、シン・アスカ」
久しぶりに口にした、半ば失いかけていた本当の名前でした。
「シン」
王子が優しい声でシンの名を呼びます。懐かしい名前、そして懐かしい声。過去に意識が強烈に引っ張られ、シンの胸が郷愁に似た感情に締め付けられます。喉の奥が焼きつくように熱く痛みます。
大きな瞳からぽろりと涙が一粒こぼれました。
「名前、誰もオレの名前なんか呼んでくれなかった。もう二度と呼んでもらえないのかと思ってた。うれしい」
「泣くな、シン。俺も似たようなものだから。誰もみな、俺を王子としか呼ばない。そして、王子としか見ない。きっと誰も、俺に俺だけの名があったことなど忘れているに違いない」
「だったら、オレに名前を教えて。オレが呼んであげるから」
涙を王子に拭ってもらったシンは、紅顔を向けて彼の答えを待ちました。
「レイ。俺の名は、レイという」
「レイ……」
不思議です。いつか、その名を何度もこの唇は刻んだような気がするのです。シンはレイのあま色をした双眸の美しい輝きに吸い込まれそうになりながら、惚けたように見つめ続けました。レイの中に自分がいます。同じようにシンの中にもレイがいるのです。レイもまた、シンの鮮やかな深紅の瞳から目を離すことができません。瞬きすることも忘れるほどに、魅入られてしまったのです。
「シン……また、逢えた」
「え…?」
「忘れたか…? 俺たちは過去世の死に際に約束したんだ。次の世界で、また出会おうと」
「ほんとう?」
シンの胸がまた締め付けられます。シンにははっきりと思い出せませんでしたが、そんな気がしました。胸の痛みと切なさの答えは、きっとそれです。
「シン……」
レイの端正な顔が近づき、唇と唇が重なり合います。うっとりとレイのキスを受けたシンは、唇が離れても胸の高鳴りを押さえることができません。もっと、レイのありのままの熱が欲しいのです。
「おまえ、貞操観念は固いほうか…?」
レイの指が下腹部へいたずらに忍び込むと、キスで熱を持ち始めたシンの形をレースの上からなぞります。
「う、ううんっ…! ユルユルだよ、あっ、心のガードの方は固いけどね」
シンの胸は期待に膨らみ、下腹部はすぐに形を変えて窮屈そうに主張を始めました。レイを見上げる瞳はうるんで、誘うように甘い色香を放ちます。これでは、さしものレイもたまりません。手のひらでなぞれば上気する肌に、唇を落としてついばんでは跡を残します。
「それはよかった。では、今すぐに契りを交わそう。もういい時間だし、おまえはそんな格好だし」
テロメア問題も適応されないこの環境では、レイも健全な肉体と遺伝子を持った16歳の男子です。エロエロしい下着一枚という格好のシンを目の前にして、行動を起こさないわけにはいかないのです。黙って返しては男が廃るというものです。やらいでか。
「れいー、はやくぅ」
「シンっ」
世界を越えて交わるのです。燃え上がらないはずありません。その夜、シンの甘い矯正は途切れることがありませんでした。
そして、ベッドの下ではアーサーが、出るに出られなくなっていたというのは、この際どうでもいいことです。
結局、婚姻届に判はついてもらえませんでしたが、シンは魔乳三姉妹の巣くう屋敷には帰らなくて済みそうです。メサイアに置いてもらえることになったのです。
シンは、レイの傍で仲良く幸せに、愛を育んで暮らしていけることでしょう。

めでたしめでたし。


長っ。
うーん、シンデレラは不幸だっていう形式的なことの例えとはいえ、シンをマワすとか、そいいうこと書いてしまったことにものすごい罪悪感を覚えております…すみません。
私、そういうの好きじゃない。シンをそんな目にあわせても全然楽しくなかったアル。
ギャグだから、と自分を必死に説得する(w

私が萌えるのは、望まずしてメイドコスプレで、メイド稼業に甘んじている姿とか、
井戸水浴びてる画ヅラとか、
栗○千明みたいなナリなのに、颯爽とコアスプレンダーに乗り込んだり、
アーサーにスカートめくりたいとか言われてキレて返り討ちにしたり、
レイに奥義をぶちこんじゃうあのくだりとかです。

シンはアニメでなにかっちゃー、すぐにパルマをぶち込もうとして、アスラン先輩に逆襲されてました。バカな子。あれは、必殺技なんだぞ。ドモン先生は最後の仕上げにちゃんと使っていましたよ。見習いなさいよ。

アーサーはネズミが似合いすぎだと思います。
そういえば、スージー(w は、ネズミ人間の声を当てていたな、と書いてる途中で気が付いた。ネズミと仲良し…高橋さんもネズミ役イケると思う。

最後はシンの格好を思い浮かべて読むと、ラブシーンも台無しな感じでいいと思います。笑うがいいよ。
私は「デス」で二人とも殺しちゃったので。新しい世界でまた、って、その転生先は主に私の脳内の妄想世界のつもりだったんですけど、いろんな物語の世界で出会わせるのもアリかな〜楽しいかも知れないなと。転生ってそうゆうことか、みたいな。

ぶどう会は、DBの悟空が初めて天下一武道会に参加するときにカマしたボケだったと思うんですけど。記憶が古すぎて、はっきりしませんな(w

私って、どうやらあんまり童話を知らないようだ。他にネタに使えそうな話がさっぱり出てこない。これとか桃太郎みたいに、最後にしか二人が会わないようなのばっか。長く二人が一緒にいるような童話ないすかね。

次は逃げ水の続きを書かないと。あれ、完結するのか…(w

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