2005年11月09日

SEED-D 50話SS「ルート:ライブ」2



レイシン解釈による再構成捏造最終回。4回分けの2回目です。

シンとの決着を「バカ野郎」で片づけられちゃったことに、唖然としたのも記憶に新しいですが、あれをほっとくのも忍びないので。いや、まぁ、別に放置でもいいんだけどさ。私なりの答えは出しておいた。
ということで、アスランを修正。

このシリーズは16禁です。
しばらく表記するの忘れてましたが、無断転載複写等は厳禁です。








 世界が運命を受け入れるか拒絶するか。
 局面は終盤、月面でのレクイエム攻防戦を迎えていた。
 連合の切り札だった最終兵器レクイエムは、ダイダロス基地制圧後、プラントによって接収され今や議長の切り札となっていた。これがある限り、議長の有利は揺るがないはずだった。
 だが、防衛ラインが突破されると、悪足掻きでネメシスからジェネシスの第一射が放たれる。その破壊の光芒は自軍の艦隊すら消し去る、常軌を逸したものだった。
 司令部が混乱を来し、正常に機能しなくなっていたなんて、誰が知るだろう。評議会そのものが愚鈍、愚劣の烏合の衆であり、その醜悪さを露呈した結果の内部崩壊だと思った。

「シン、いい加減にしろ、お前!」
 レクイエムが撃たれる前に破壊してしまいたいだろう、ジャスティスの足止めをしている格好の俺は、本音を晒せば単純に決着をつけたいだけだった。
 これまでに、何度も刃を交える機会はあったが勝てた試しがなかった。負けもしなかったけどな。
「こうして戦い続けることを、お前自身が望んでいるのか!? 議長に、レイに言われるがまま、力を振るっているだけじゃないのか!」
「うるさいッ、この裏切り者がァ! 今日こそ俺は、あんたを倒す!」
 勝負をつけてやると意気込んだものの、応戦したジャスティスは容赦なく強かった。まったく俺の力が及ばなかったわけじゃない。でも、力量、能力、技能、経験値…それぞれの差は微々たるもののようで、歴然としていた。何度となくシミュレーションを行った対ジャスティス戦術プランの一手か二手先を読まれている感じだった。実力の差をまざまざと見せつけられながら、デスティニーの主要兵装は剥ぎ取られて行った。
「お前の本来の望みは! 力がない自分が悔しかったんだろう、守るべきものを守る為に求めた力だと言っていたじゃないか! その思いと、現実の行いが導き出す結果に食い違いが生じないかどうか、お前がお前の頭でしっかり考えてみろ!」
 残されたのはアロンダイト・ビームソードと、両掌のパルマフィオキーナのみ。
 ゼロ距離でこそ真価を発揮するパルマフィオキーナは扱いづらい武装だ。使うタイミングを絶対に見誤れない。一撃必殺の魅力はあるが、破壊対象がジャスティスともなると、どうでもいい雑魚とは違って、おいそれと懐に飛び込めない。
 なんせ、ジャスティスには対近距離用のグリフォンビームブレイドがある。グリフォンを展開させた状態で繰り出される蹴り技の破壊力はシャレにならない。まともに食らったらデスティニーでも一環の終わりだ。
「お前は、俺の話を聞いてるのか!」
 交戦中だというのに、スピーカーからはひっきりなしにアスラン・ザラの声。
 聞いてねぇよ。聞いてるわけねーだろうが。
 手練れのあんたは余裕綽々だろうが、こちとら命がけなんだ。予言者並みに先を読まれて戦況は悪化の一途、追い詰められて後が無いんだぞ。
「この世から戦争をなくしたいんじゃなかったのか! それが、戦火を拡大させ、世界を破滅へ追いやる側に与するなんて、間違っているだろう! おい、シン!」
 ジャスティスを墜とせたら、レイはきっと俺を見直すよ。褒めてくれるだろうし、株だって上がったよ。なのに、この百戦錬磨の勇士様はそれを許してくれそうにない。あぁ、腹が立つ! うまくやれば勝てそうだなんて、俺のあまっちょろい夢語りだったのか。
「ちくしょう、この!」
「戦うな、そこをどくんだ! レクイエムの照準がどこに合わされているか、それがわからないお前じゃないだろう! 撃たれるのは地球…」
「オーブだろ」
 相手が口にする前に、俺の低い声が故郷の名をつぶやいていた。
 俺の家族を守らなかった国。俺の幸せを殺した国。俺が見捨てた国。
 声にするだけで、考えるだけで胸に闇がどっと押し寄せる。触れたくない痛みだ。黒い炎のようなイバラが纏わりついた、口を開けたままの傷だ。
 怒りか悲しみか、よくわからない情念がふつふつと湧き上がる。
「分かっていて、なぜ邪魔をする?! お前は故郷が焼き払われても構わないというのか!」
「…うるさい、うるさいうるさい! あの国は議長に逆らったから、消されるんだ。それが運命だ!」
「お前…本気でいってるのか!」
 アスラン・ザラの声に怒りが満ちた。
 どこかに、一瞬でいい、勝機が見えないものか。そしたらパルマフィオキーナをぶち込んで起死回生の一発逆転を狙える。
「この、この、このぉーー!」
 アロンダイトの渾身の斬撃が、ジャスティスのビームサーベル、シュペールラケルタを弾き飛ばした。
 ジャスティスの動きに若干の隙が生まれた。
 もう一対のラケルタを抜かれる前に、畳みかける! 
 回りこんで死角を取ったデスティニーが下方からアロンダイトで斬り上げる。しかし、紙一重でかわされる。返す刃で今度は上段斬りを繰り出すが、これも軽くいなされた。
「あ?!」
 ジャスティスの背面に装備されているはずのユニット、ファトゥムがない。分離されているのに気付いたのは、最後の一撃を加えようとモーションを開始したのと同時だった。
 胴部を狙った斬撃は、鉄壁の防御のビームキャリーシールドに防御された。読まれている。実体型にビーム発生装置を内蔵した二重のシールドだ。衝撃が跳ね返り、さらに振り払われたデスティニーは大きく体勢を崩す。
「うわぁっ!」
 ジャスティスが後方へ飛び、十分な距離を取る。シールドの先端部に装備されたシャイニングエッジを取り外すのが視認できた。
 まずい。分離されたファトゥムはどこだ?! 上か後ろか…どっちだ!
 シャイニングエッジはデスティニーに装備されているフラッシュエッジと同系のビームブーメランだが、一振りがデカい。ビーム出力と刃の面積を考えると、遠隔操作され、どこから来るか分からないファトゥムの攻撃より、こっちを先だって排除するべきなのは明白だった。
 より生き残る可能性の高い道を選ぶなら。
「過去にこだわって、いつまでも後ろを振り返ってばかりいるな! 失ったものだけ見つめていても、何も得られはしないッ。守ろうと手にした力で、奪ってはいけない! 未来を殺してはいけないんだ!」
 輝きながら襲いくるシャイニングエッジの残像が、俺には、宇宙の虚空を切り裂く死に神の鎌に見えた。
 体勢を立て直せないまま、しゃにむにでアロンダイトを構え、それを叩き落とす。
 直後、背面に被弾した。行方を捕らえ切れなかったファトゥムの主砲の直撃を受けたのだ。機体が、引き裂かれるような天地も定かでなくなる揺れに翻弄される。
「うわあああああーーーーーー!」
 激しく明滅する視界、混濁しようとする意識を留める為に歯を食いしばりながら、俺は、デスティニーが月面へ叩き付けられる衝撃に耐えた。
 なおも月面を抉るように滑って、機体はようやくのことで停止した。
 静寂そして、沈黙。
 コックピットにはデジタル音と、俺の疲弊し、乱れた呼吸音。
 頭がくらくらする。脳震盪か。
 ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう。
 動けない。コンソールパネルに覆い被さるように突っ伏したまま、呻く。
「そんなこと…そんなことはわかってるんだ、俺は…」
 あんたの言ったことは、ぜんぶ。
 握りしめようとした拳に、力が、入らない。
「レイが笑えばそれでいい。他の奴らのことなんか知るもんか。俺にはそれがすべてだ」
 スピーカーの向こうで、アスラン・ザラの困惑混じりの嘆息がした。
「シン…それでは……」
「力がないから家族を失って…力を手に入れたのに、ステラを助けてやれなくて…。やっぱり俺は、何も守れない…」
 俺の力の意味は行き場をなくし、いつしか戦うことそのものに意義を求めるしかなくなっていた。
 空虚だった。俺は空っぽ。イライラの正体はだいたいはそれのせいだった。
 守りたいと願ったって、守るべき対象がない。
 力だけが、空回りだ。
 でも、俺は気付いてしまった。
「もう俺には何も残ってないって思った時に…俺の傍にはレイがいることに気付いたんだ……せめて、これを守らなきゃって」
 正しいか、そうでないかなんて、俺にはわからない。
 必要か、そうでないかだけだった。
 アスラン・ザラのような正義を追い求める人間からすれば、レイは、行き場をなくした俺の力に意味を与え、役割を用意し、扱い易い力としただけだと、そう見えたに違いない。
 この想いが嘘だと蔑まれてもいい。
 理解不能だろう。
 世界と一人を天秤にかけたら、一人の方が重かっただなんて。
「なのに、なのに…最後に残った…守りたい、大事なものは…放っておいても自ら滅びる運命だっていうんだ…! そんなのないよ…。だったら俺は、その運命に少しでも救いがあるように、神の御手から命が零れ落ちて行く速さを緩やかにできるように、俺は…こんなことしか…!」
 声が震え、最後には詰まって、言葉にならなくなった。
 アスラン・ザラは少ない情報の中で、どうにか事情を把握しようと思考を巡らせているようだった。また、整った人のよさそうな顔に苦悩を浮かべているんだろう。
「シン、お前はつまり…デスティニープランが世界の未来を閉ざすとわかっていて、それでもレイのために戦っていたと? 力の振るい方を誤っていると承知のうえで?」
 今度は言葉の始まりと、終わりにはっきりとため息をついた。
「融通の利かない奴だとは思っていたが、そういう形で一途だとは思わなかったな」
 発見だ、と呆れたように誠実な声が言った。
「でも、はっきり言っておくが、議長の唱える新しい世界なんかでは、レイも、それにお前も…シンだって救われることはないんだ。それだけはわかってほしい」
 確信に満ちた、アスラン・ザラの力強い声が、そのとき初めて、すぅっと俺の耳に入った。
 あやふやだった、選び取るべき本来の道が、鮮明に浮き上がった。
「…そう…そうだよな……」
 つぶやいたと同時に、コックピットに差し込んだ強烈な閃光。
 月面の遠くに、巨大な火柱が立っていた。渦巻くようなサンセットオレンジのまばゆいばかりの光だった。
 すぐに分かった。
 レクイエムが落ちた。
「あ…あぁ……」
 それは高く高く宇宙を貫いて、そう長く続かないまま静かに収束し、何事もなかったかのように消滅した。
「レクイエムが…議長の野望も、終わったな」
 そうだ、終わったんだ。
 議長は、土壇場で『地球』を人質にとり、その喉元へレクイエムという刃を突きつけて、デスティニープラン導入を実施させる強硬手段に出た。それは、彼の当初からの目論みの内だったのかも知れないが、人類を脅威と抗えぬ力のもとに屈させることで支配しようとした。
 そのレクイエムという脅威の消失は、やはり痛手。いや、戦略的には終焉の序曲が開始されたも同然だ。
 議長に私物化されて久しい評議会は、これでいっぺんに瓦解するだろう。
 アスラン・ザラの次の言葉が、それに追い討ちをかけた。
「…つい今し方、メサイアへの総攻撃が開始されたようだ」
「……!」
「まだ、戦うか…? シン」
「レイ……レジェンドは……!」
 レジェンドはメサイアの防衛に回った。おそらくは、そこでフリーダムと相まみえたはずだ。
 レイは、フリーダムのパイロットと少なからず因縁があるようなことを口にしていた。何かの拍子でぽつりと漏らしたことだ、多くを語ることを望んでいないと思った俺は、それ以上のことは聞かなかった。
 探索をかけたが、レーダーにレジェンドの認識コードは引っかからなかった。ロストしている。俺は、体中の血の気が引く音を、確かに聞いた。肝が冷えた。
「フリーダムは無意に命を殺めるようなことはしない。執拗に食い下がったりしなければ、墜ちたということはないだろう」
 レイのことだから、自棄になることも、引き際を見誤るような失態もないと思う。
 俺と同じように、生き残る道を選択するはずだ。
 あいつは俺に、生きたいといったんだ。
「…レイは、俺と同じなんだ。迷路に閉じこめられたまま出口を見つけられないで彷徨ってる迷子なんだ。助けてやらなきゃ、いけないんだ」
 機体のスキャンを行い、各部のチェックを早急に済ませる。稼働可能だ。装甲も落ちてない。右ウイングを損傷したようだが、何とかなる範囲だ。
「俺が…レイだけは救ってやらないと…俺にしかレイは救えないんだ」
 片翼の欠けたデスティニーが、月面に立った。
 アロンダイトを蒼白い地に突き立てる。
「俺は…、もう戦わない」
 俺は、力を捨てた。
「シン……」
 アスラン・ザラの声はある種、感慨深げだった。
 分離したユニットを再び背に迎えたジャスティスが、前方に降り立つ。
「もしかするとお前は…俺たちに止めてほしかったのか。こうなることを、望んでいたいたのか…?」
「…さぁ。そこまでは」
 どうだろう。心のどこかで、期待してたのかな、俺。
 世界の、ひいては人類の存亡を左右するほどの間違いは、修正されるだろうと、そうなるべきだと頭の片隅にあったかも知れない。
 どのみち運命はなるようにしかならないんだ。
「オーブ攻防の時に、あんたは俺に言ったよな」
 その怒りの本当の理由も知らないまま、戦ってはいけないと。
 俺は、この言葉に一瞬我に返る思いがした。俺の本質を見抜かれた、そんな気がしたんだ。
「俺の怒りの本当の理由って……なんなんだ?」
「……、あぁ…あれか…」
 なんだ、その今思い出しましたみたいな間は。尤もらしい答えがあったんだろうな?
「お前の怒りの…その正体は、悲しみだよ。戦っても戦っても、奪い奪われるだけで、失くしたものは戻らず、思うように癒されない心の悲鳴だ。なまじ手中にある力が、それを別の感情へ変換し、増大させて行く。怒り、憎しみ、無力感…」
 すらすらと、まるで、自分のことを話すような口ぶり。
「なるほど…ね」
 アスラン・ザラの言ったことは、その通りだった。
 やっぱり俺よりずっと早く気付いていた、というより知っていたんだな。尊敬の念はわかないけど、感心するくらいならしてやっても良さそうだ。
「俺がそうだったから、よく分かったんだよ。誰より俺がお前のことを理解してやって、そこから抜け出せるよう、手引きしてやれればよかったんだが…上手く見ることができなかった」
「気にすることなんかないよ。あんたの言葉には力がなかった。どうやったって俺には届かなかったんだ…今、あんたが言った答えも、俺が自分で辿り着いたものだから、頷ける。信じられる」
「……お前は、相も変わらず…扱いづらいな」
 と、俺の悪態に窮して絶句するアスラン・ザラに、心の中で舌を出す。
「隊長…俺、気がつくの…目を覚ますのが遅すぎたってことないよな? まだ、間に合うよな……」
 自分自身に言い聞かせるつもりで、その言葉を噛みしめる。
「ああ。遅くない、遅くはないさ」
 俺は、少し口もとを歪めて。レイのように美しくは笑えないけど。
 デスティニーが月面を蹴り、暗闇へ飛び立つ。遠ざかるジャスティスを下に見やりながら、身をひるがえした。
「俺とお前が目指したものは、本当は同じだったんだ…シン」
 目的地は同じでも、そこへ至ろうとして選んだ道が違いすぎた。
 俺と彼が相容れることがなかったのは、たったそれだけのことだったのかも、知れない。

 
 to next.

 こうだったらいいのになー、こーうだったらいいのにな。
 ここへ辿り着くまでの材料が少なすぎる。
 そして、私はアスランのことをやっぱりよくわかっていない……

posted by 百武 晶 at 21:21| Comment(0) | TrackBack(0) | SEED-D小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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